研究課題/領域番号 |
23591086
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
三浦 哲嗣 札幌医科大学, 医学部, 教授 (90199951)
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研究分担者 |
三木 隆幸 札幌医科大学, 医学部, 准教授 (00336405)
丹野 雅也 札幌医科大学, 医学部, 講師 (00398322)
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キーワード | ミトコンドリア / 細胞死 / 細胞内情報伝達 |
研究概要 |
本年度はミトコンドリア透過性遷移孔(mitochondrial permeability transition pore, mPTP)の制御をその再閉鎖機構に焦点を当てて解析した。心筋細胞株であるH9c2細胞において、antimycin A (AA)の一過性処置による酸化ストレスで誘導されるmPTPの開口~再閉鎖の過程をTMREを用いたミトコンドリア膜電位、ミトコンドリアに取り込ませたcalceinを指標に測定した。AAによるmPTPの開口には、mPTPの構成蛋白ならびに制御蛋白の発現レベルの変化は伴っていなかったが、GSK-3betaとミトコンドリアcomplex IIIとの結合が亢進していた。ミトコンドリアATP感受性Kチャネル(mKatp channel)の活性化はGSK-3beta-Ser9のリン酸化、GSK-3beta-complex III結合の抑制、活性酸素産制の抑制ならびにmPTPの再閉鎖の促進をもたらした。こうしたmKatp channel活性化の効果はsiRNAを用いたGSK-3betaノックダウンによって再現された。また、AAの処置後に、活性酸素消去薬(MPG, N-acetylcysteine)を用いることによってもmPTPの再閉鎖が有意に促進された。いずれの処置によるmPTPの再閉鎖促進においても、AA処置後のH9c2細胞の壊死が抑制された。以上の結果から、開口したmPTPの再閉鎖を阻害する要因として持続的な活性酸素が重要であり、その産生にはGSK-3beta-complex III結合が関与し、GSK-3betaのSer9リン酸化は活性酸素産生の抑制を介してmPTPの再閉鎖を促進し細胞を壊死から保護することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
mPTPの開口・再閉鎖に関する蛋白キナーゼとmPTPの構成・制御蛋白との関連の主なものとの関連について基本的な成績を得ることができた。またミトコンドリアのunfolded protein responseについても糖尿病心筋の解析がほぼ終了しており最終的な解析を行っている段階である(来年度には研究実績として報告が可能である)。
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今後の研究の推進方策 |
mPTPの開口を制御する蛋白キナーゼ系のうちGSK-3betaの重要性を確認し、またその役割がミトコンドリアcomplex IIIとの相互作用を介した活性酸素産生促進であるとの成績を得た。今後は、GSK-3betaが細胞質からミトコンドリアへ移行する分子機構とGSK-3betaのリン酸化に関与する蛋白キナーゼのミトコンドリア分布の解明に重点を置き、プロテオミクスの手法を駆使して研究を推進する。
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次年度の研究費の使用計画 |
年度末に購入したPower Lab8/35の購入費が当初の見積り額よりも少額であったこと、また作製を依頼している抗VDAC2抗体の完成が遅れ、そのための費用を年度内に支出できなかったことが、残額が生じた理由である。抗体作製費用ならびに実験試薬の購入のための費用として使用する予定である。
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