研究課題
前年度までに培養心筋細胞(H9c2細胞)を用いて見出した「活性酸素によるミトコンドリア透過性遷移孔(mitochondrial permeability transition pore, mPTP)の開口とその維持にcomplex IIIとGSK-3betaの結合が寄与し、ミトコンドリアATP感受性Kチャネル(Katp channel)の活性化がcomplex II-GSK-3beta結合を抑制してmPTP再閉鎖を促進し、細胞を壊死から救済するという現象」を非心筋細胞(C2C12細胞)を用いて再検討し、この心筋以外の細胞種でも同様に認められることを確認した。本年度ではさらに、GSK-3betaの細胞質からミトコンドリアへの移行の機序を、2次元電気泳動、MALDI-TOF/MS、変異GSK-3betaの作成によって解析した。その結果、GSK-3betaとvoltage dependent anion channel-2 (VDAC2)との蛋白蛋白結合、GSK-3betaのキナーゼ活性、GSK-3betaのN末端側15個のアミノ酸で構成されるドメインが、活性酸素による刺激によって誘導されるGSK-3betaのミトコンドリアへの移行とmPTPの開口に重要であること、一方活性酸素自身はGSK-3beta活性は直接的には亢進させないことを明らかにした。この成績と既報のものを含めたこれまでの実験成績を総括することにより、「活性酸素によってGSK-3betaのN末端ドメインを介してGSK-3betaとVDAC2の結合が起こり、その結果ミトコンドリアへの蛋白輸送担体であるTOM20との親和性が上昇してGSK-3betaがミトコンドリア内の膜間スペース(mitochondrial intermembrane space)に移行し、そこでミトコンドリア内膜上のcomplex IIIと結合することによってミトコンドリア内での活性酸素産生を亢進させ、mPTP開口とその維持がもたらされる」といった新たな仮説を示すことができた。今後、この仮説のさらなる検証を進める予定である。
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