研究課題/領域番号 |
23591087
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研究機関 | 鶴見大学 |
研究代表者 |
奥村 敏 鶴見大学, 歯学部, 教授 (60233475)
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研究分担者 |
佐藤 元彦 愛知医科大学, 医学部, 教授 (40292122)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | シグナル伝達 / 循環器高血圧 / サイクリックAMP / 心不全 / 遺伝子改変マウス |
研究概要 |
[研究目的]心臓線維化は 1) 線維芽細胞内でのCollagen分子の産生 2)細胞外で成熟したCollagen分子同士の架橋によるCollagen線維の形成 3)コラーゲン分解酵素による老朽化したCollagen線維の分解の3段階からなる。[方法と結果]平成23年度はEpacがいずれの段階を制御して心臓線維化を促進しているかをEpac1KOもちいた慢性カテコラミン刺激心不全マウスモデルを作製して行った。作成方法はEpac1KOにOsmotic mini-pump (Alzet 2001) を用いて慢性 ISO (60mg/kg/day) 投与を行い投与前、投与後1日、3日、7日の心臓組織を摘出して以下の実験を行った。1) Collagen-1alpha-1, Collagen-1alpha-2, Collagen-3alphaの発現量をq-PCRを用いて定量した。各サブタイプのCollagen発現量は経時的に増加したがEpac1KOとWTで有意差は認められなかった。2) 心臓線維芽細胞から分泌される lysyl oxidase (LOX) はCollagen分子同士の架橋に重要な酵素であるが、LOXの発現量にEpac1KOとWTで有意差は見られなかった。3) Collagen分解酵素(MMP: matrix metalloproteinase)として重要なMMP-2の発現量をWBを用いて検討したところ投与前ならびに投与1日ではEpac1KOとWTで有意差は認められなかったが、投与3日、7日ではWTに比較してEpac1KOではMMP-2の有為な発現上昇が見られた。 以上の結果よりEpac1KOにおける慢性カテコラミン刺激モデルにおける心臓線維化抑制機序としてMMPによるCollagen分子の分解亢進が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
心臓に発現する主要なサブタイプであるEpac1欠損マウスが慢性カテコラミン刺激で心臓線維化が抑制される機序としてコラーゲン分解促進作用である本申請の主要なキーデータを取得することができた。平成23年度の実験データから平成24年度はさらに詳細なメカニズム解明を行うとともに他の心不全マウスモデル(心筋梗塞マウスモデル、大動脈結窄モデルなど)についても、本申請課題の研究内容項目には記載されていないがEpac1KOの心臓線維化抑制作用ならびにメカニズムの解明について検討を行っていきたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
Epac2KOを用いて慢性カテコラミン刺激心不全マウスモデルを作製してEpac2の心臓線維化における役割について検討する。また平成23年度の結果からEpacはMMP-2の発現抑制作用があることが示唆された。培養心筋細胞を用いてEpac特異的刺激薬(8-CPT-AM)を用いて心筋細胞に発現するMMP-2の発現量をウエスタンブロティングを用いて検討するとともに、Zymographyを用いてMMPの活性についても検討予定である。Epac1TGとEpac1KOを交配して心筋細胞にはEpac1が発現するが、心臓線維芽細胞には Epac1 が発現しないトランスジェニックマウス (Epac1TG-Epac1KO) の作成に関してはEpac1TG-Epac1(hetero)マウスの作成までは終了した。今後Epac1TGxEpac1KO(hetero)マウスを交配してEpac1TG-Epac1KOを作製する。なお昨年度は動物管理に必要な消耗品(餌、床敷代)、試薬類や培養心筋細胞を同一施設内で共用することにより新規購入の必要が無くなり残額が494,985円となったが今年度は鶴見大学に移動したため同一研究室内で試薬や培養心筋細胞を共有する可能性は少なく交付された研究費はすべて使用する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
消耗品:抗体、オスモティックポンプ、試薬類、動物維持費用(餌、床敷、動物センター管理費など)学会旅費:日本循環器学会、アメリカ心臓病学会、日本内科学会など論文投稿費用、別刷費用 などが必要である。
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