研究課題/領域番号 |
23591087
|
研究機関 | 鶴見大学 |
研究代表者 |
奥村 敏 鶴見大学, 歯学部, 教授 (60233475)
|
研究分担者 |
佐藤 元彦 愛知医科大学, 医学部, 教授 (40292122)
|
キーワード | シグナル伝達 / 循環器高血圧 / サイクリックAMP / 心不全 / 遺伝子改変マウス |
研究概要 |
[目的]平成23年度の解析結果よりcAMPにより活性化される新しいベータアドレナリン受容体(b-AR)シグナル構成因子 Epacの欠損マウス(Epac1KO)における慢性圧負荷刺激心不全マウスモデルの心臓繊維化抑制機序としてMMPによるCollagen分子の分解亢進が示唆された。平成24年度は慢性化カテコラミン刺激心不全マウスモデルを作成してEpac1の心臓繊維化にはたす役割について更に詳細な検討を行った。[方法] 心臓に高発現を示すEpac1ノックアウトマウス(Epac1KO)とWT(wild type)を用いてイソプロテレノール(ISO)による慢性刺激(60mg/kg/day 7days)心不全マウスモデルを作成した。[結果] ISO投与後の心機能(LVEF)低下の割合はEpac1KOではWTに比べて有意に抑制されていた。心肥大の程度に関しては有意差が見られなかったが、TUNEL染色によるアポトーシス陽性細胞の割合とMasson-Trichrome染色による線維化領域はEpac1KOではWTにくらべて有意に減少していた。以上の所見が確認されたサンプルを用いて、EGFレセプター-(EGFR)-ERK経路の活性化は心筋線維芽細胞の増殖を誘導するが確認されているため、EGFRとERKのリン酸化をウエスタンブロッティング(WB)と免疫染色(IHC)で確認した。その結果WBの結果ではWTではEpac1KOに比べてEGFR(Tyr1088)は約2倍、ERK(Tyr202/Tyr204)は約1.5倍高く、いずれのリン酸化亢進も線維化領域に限局していた。[結論] MMPによるCollagen分子の分解抑制以外にEpac1はEGFR-ERK経路の活性化により心臓線維化の形成を促進させることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度の研究成果よりEpac1KOの慢性カテコラミン刺激心不全マウスモデルの繊維化抑制作用のメカニズムとしてMMPによるCollagen分子の分解亢進が確認されたが、今年度の研究成果からEpacは1EGFR-ERKシグナルの活性化を制御して心臓線維化を制御しているという新しいメカニズムが確認された。
|
今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、慢性カテコラミン刺激以外の心不全マウスモデルをEpac1KOを用いて作成し、Epac1KOが同様に心臓繊維化抑制作用を示すかどうかを検討する。まずは大動脈縮窄による慢性圧負荷刺激心不全マウスモデルについて解析を行い、心臓繊維化抑制の程度、メカニズムの違いなどを中心に検討する予定である。Epacには2種類のサブタイプが存在する。心臓に発現する主要なサブタイプはEpac1であるが、Epac2も心臓に発現していることを我々は確認している。Epac2KOについても、Epac1KOと同様に心不全マウスモデルを作成して、Epacの心臓繊維化に対するサブタイプ特異的な違いについて検討を行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
消耗品:抗体、試薬類、動物維持費用(餌、床敷、動物センター管理費用など) 学会旅費:日本循環器学会、アメリカ心臓病協会、日本内科学会、循環制御医学会、老年病学会など 論文投稿費用、別刷費用、英文校閲費用
|