研究課題/領域番号 |
23591091
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
西井 明子(関明子) 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (80408608)
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キーワード | ギャップジャンクション / パリティ保障機構 / コネキシン45 / 洞結節 |
研究概要 |
平成24年度は、計画の通り、1. ER1α-FloxCx45マウス(コントロール及びタモキシフェン投与群)の電気生理学的検査を更に進めると共に、2. Cx45の発現により活性が制御されるNFATC転写因子の核内移行についての実験を行った。また、胎生期にCx45をノックアウトした場合の心臓の収縮様式から、心臓刺激伝導障害の推測を行った。 1. 電気生理学的検査の解析結果は、コントロール群に比較してタモキシフェン群に於いて洞結節回復時間の有意な延長が認められた。このことはCx45が洞結節のパリティ保証機構において重要な役割を果たしていることを示唆するものである。 2. NFATC転写因子についての実験では、蛍光で標識したNFATC(Tomato-NFATC)と、①CMV-Cx45-IRES-GFPまたは②CMV-IRES-AcGFPをN2A細胞にダブルトランスフェクションし、tomatoとGFPの発現を確認後、ガラス電極を用いて高濃度のカルシウム溶液またはIP3を細胞内に注入した。注入した細胞と隣接する細胞におけるNFATCの核内移行を、蛍光カメラでタイムラプス撮影し、Cx45の有無による差について検討した。Cx45を発現した細胞群と、Cx45を欠く細胞群との間で、隣接する細胞におけるNFATCの核内移行には、残念ながら有意差はみられなかった。 3. 更に、コントロールマウス及びCx45の胎生期ノックアウトモデル(胎生9.5日)について、点解析ソフトMotion Anlyzerを用いて、胎生期心臓の収縮様式について画像解析を行った。その結果、Cx45ノックアウト群では、房室ブロック及び逆行性伝導と思われる収縮異常が認められた。成体におけるCx45ノックアウトでは、房室ブロックはみられず、主に洞結節の機能異常が認められることとは対照的な結果であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度予定していた、成体におけるCx45ノックアウトとその電気生理学的解析及び転写因子への影響の検討をほぼ完了することができ、更に胎生期Cx45ノックアウトによる心臓の収縮異常から、心臓刺激伝導異常についての解析も行うことができた。これらの結果から、成体におけるCx45のノックアウトが洞結節機能に影響することを胎生期ノックアウトと比較して示すことができた。以上より研究の達成度はおおむね順調と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
マウス成体における電気生理学的実験が完了したため、今後は細胞電気生理実験を行い、Cx45をノックアウトした洞結節細胞の機能についての直接的な測定を行っていく予定である。mT/mGマウスは,もともと全身に赤色の蛍光色素であるtdTomatoを発現(mT)しているが、Cre遺伝子が導入されると,mTは発現しなくなり、緑色のGFPが発現(mG)するようになる。この性質を利用して,ER1α-FloxCx45マウスをmT/mGマウスと交配し、 CreとtdTomato が組み込まれた個体を選び、タモキシフェン投与群、非投与群について、パッチクランプ法によって、それぞれの洞結節細胞のCx45の細胞間コンダクタンスを測定し形成に重要な役割を果たすCa電流、過分極誘発電流(If)についても、パッチクランプ法による電流解析を行う。これらのイオンチャネル電流に変化がなければ、ER1α-FloxCx45マウスのパリティ保障機構の破綻による洞結節の機能低下は、Cx45の欠失によるものであることを証明できると考える。
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度は実験補助員の人件費が予定よりも少なかったため、次年度繰り越し金額が生じた。この研究費については、細胞電気生理学的実験に必要な消耗品(ガラス電極及び試薬類)の購入に充てる予定である。
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