研究概要 |
ギャップジャンクション(GJ)は、細胞間の通路であり、コネキシン(Cx)と呼ばれる単位蛋白が12個集合することによって形成される。心筋にはCx43, 40, 45, 30.2, 31の発現が報告されている。心臓刺激伝導系にはCx40, 45, 30.2が発現しており、中でもCx45は洞結節の中心部に多く存在し重要な役割を果たすと考えられている。数多くの心筋細胞の中には活動電位の発火が速いものから遅いものまで様々な細胞が存在する。我々はリズムの生成、伝導を整然と行うためには、心筋細胞同士をつなぐGJによるエラーチェック機構(パリティ保証機構)が必要であり、その役割をCx45が担っていると仮定した。その仮説を検証するため、胎生期及び成体における心筋Cx45ノックアウトマウスを作製した。胎児心臓では、Cx45が最初に心筋細胞に発現するCxであり、その発現は出生時まで続く。我々は、Cx45の胎生ノックアウトマウスの胎生8.5から10.5日の心臓を用いて、点追跡ソフトを用いたビデオ解析により、伝導ブロックと逆行性伝導がみられることを検証した。心臓の収縮は心房から心室への秩序立ったものではなく、蠕動様で、胎児は胎生10.5日で死亡した。収縮期及び拡張期の心室容積を計算すると、胎児の発育に十分な心拍出量が得られていないと考えられた。一方、成体心臓ではCx45は刺激伝導系に限局して発現している。タモキシフェンを用いた時期特異的・心臓特異的Cx45ノックアウトでは、成体心臓に於いては電気生理学的検査で洞結節回復時間の延長がみられ、洞結節機能が障害されていることが証明された。これらのことから、胎児心臓においては、刺激伝導及び心筋収縮の全般、また成体の心臓に於いては主に洞結節機能について、Cx45によるパリティ保証機構が存在すると考えられた。
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