研究課題/領域番号 |
23591092
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
針谷 敏夫 明治大学, 農学部, 教授 (70135557)
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研究分担者 |
石田 充代(大橋充代) 明治大学, 研究知財戦略機構, 研究員 (20445860)
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キーワード | 周産期心筋症 / プロラクチン |
研究概要 |
周産期心筋症は、それまで健康だった女性が妊娠を機に心不全を発症する特異な心筋症である。長らく原因不明であったこの疾患の原因について、授乳ホルモンであるプロラクチンがプロテアーゼ切断を受けることにあるという報告が2007年になされた。本研究の目的は、周産期心筋症と妊娠高血圧症候群患者の検体血清を用い、①切断プロラクチンおよびその切断酵素の測定系を確立することと、②心筋症モデル細胞および周産期心筋症モデルマウスの作成と解析を行うことである。 ①切断プロラクチンおよびその切断酵素の測定系を確立 平成23年度に切断プロラクチン量及びそのプロテアーゼであるカテプシンD活性の測定方法を確立し、試験的に切断プロラクチン量及びカテプシンD活性測定を行った。平成24年度は、課題となっていた切断プロラクチン量測定系の測定精度向上と検体数の蓄積に取り組んだ。細かい条件検討を行い、従来の測定結果と新たな測定結果の変動係数を求めたところ、約2-5倍に測定の安定性が向上した。これにより、 再現性を示すために2回行っていた測定回数を1回に減らすことが出来、経費も半減することが出来た。また、検体数も健常妊娠コントロールは12検体から15検体に、周産期心筋症検体も10検体から23検体へと蓄積することが出来た。 ②心筋症モデル細胞および周産期心筋症モデルマウスの作成と解析 ALZETミニ浸透圧ポンプにて切断プロラクチンを持続投与したマウスの作成に取り組んだ。しかしながら、投与マウスに大きな変化は見られず、解析方法を変更することとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は臨床研究と基礎研究からなる。臨床研究である「①切断プロラクチンおよびその切断酵素の測定系を確立」はすでに申請時の研究目的を達成し、検体数の確保に力を入れており計画以上に進展している。 基礎研究である「②心筋症モデル細胞および周産期心筋症モデルマウスの作成と解析」は、申請時とは解析方法を変更したため達成度は50%である。「研究計画・方法2-2 妊娠高血圧症候群を伴わない周産期心筋症モデルマウスの作成と解析」はミニ浸透圧ポンプを用いた切断プロラクチン持続投与マウスで大きな変化が見られなかった。そこで、腎臓被膜下へ下垂体を移植した高プロラクチン血症発症マウスの解析に変更した。その結果、心重量や心筋細胞のサイズ、毛細血管の量を計測し、プロラクチンが心臓において血管新生に働く可能性があることを示すことが出来た。一方、「研究計画・方法2-1 心筋症モデル細胞の作成と解析」は本年度実験を開始することが出来ず、平成25年度に取り組むことになった。
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今後の研究の推進方策 |
臨床研究である「①切断プロラクチンおよびその切断酵素の測定系を確立」は論文のアクセプトを目標とする。内容は「切断プロラクチンおよびカテプシンD測定系の確立と妊娠高血圧症候群患者での測定結果」を予定している。基礎研究の「妊娠高血圧症候群を伴わない周産期心筋症モデルマウスの作成と解析」も論文の投稿を目指し、必要なら追加実験を行う。 本年度は主に「研究計画・方法2-1 心筋症モデル細胞の作成と解析」に取り組む。当初の研究計画を改変し、1.心臓の器官培養、2.心筋細胞の初代培養、3.ラット心筋株化細胞H9C2と正常ヒト臍帯静脈内皮細胞の共培養により切断プロラクチンの作用を解析する。 「1.心臓の器官培養」、「2.心筋細胞の初代培養」では周産期心筋症を再現した低酸素状態で心臓を培養する。この状態で血管新生が開始し、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)などの血管新生因子の発現が高まると予想される。その時に抗血管新生因子である切断プロラクチンを添加すると血管新生が抑制されるのか等を解析する。 「3.ラット心筋株化細胞H9C2と正常ヒト臍帯静脈内皮細胞の共培養」では、切断プロラクチンの作用が血管内皮細胞由来なのか、直接心筋細胞に作用しているのかを明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費の主要な用途は消耗品である。「1.心臓の器官培養」、「2.心筋細胞の初代培養」、「3.ラット心筋株化細胞H9C2と正常ヒト臍帯静脈内皮細胞の共培養」による切断プロラクチンの作用を解析するための消耗品を購入する。細胞、マウス及びそれらの維持に必要な培地や餌、解析に必要な一般試薬を購入する。 また、これまでの研究成果を国際学会(米国内分泌学会)での発表を予定しておりその旅費の一部に使用する。論文発表の際の英文校閲および印刷費は、大学内補助金を使用可能なため研究費の使用予定はない。
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