研究課題
本年度は、虚血性(陳旧性心筋梗塞)および非虚血性心不全(高頻度右室ペーシング)モデルの双方において、内因性ストレス感受性因子であるAMP-Activated Protein Kinase(AMPK)の活性化剤(AICAR)の心不全発症後(治療)投与による心筋の遺伝子発現の変化を検討し、BNPやアデノシン産生酵素などの発現亢進を確認した。心不全の病態の多様性に対応するために、虚血性および非虚血性心不全モデルの双方において、AICARの投与開始を、心不全発症前(予防)と心不全発症後(治療)の双方のタイミングで行い、その効果を血行動態、心機能および遺伝子発現変化から多面的に検討した。虚血性モデルにおいては左室径が拡大し、左室駆出率が低下したが、AICAR予防投与により、左室径の拡大と左室駆出率の低下が抑制された。また、AICAR治療投与でも、左室径の拡大と左室駆出率の低下が抑制された。一方、非虚血性モデルにおいても虚血性モデルと同様の結果が認められた。虚血性および非虚血性心不全モデルの双方において得られた心筋サンプルを用いて、DNAマイクロアレイ法による網羅的な遺伝子発現の解析を行った。その結果、非虚血性心不全モデルの心筋において代償性心不全期に2倍以上発現が増加した遺伝子は、多彩な心血管保護作用を有する内因性生理活性物質であるBNPやアデノシン産生酵素などが認められた。AICAR投与により、2倍以上発現が増加した遺伝子はAMPKを含めて38個認められた。また、陳旧性心筋梗塞による虚血性心不全モデルでは、ICAM-1、IL-6、VEGF receptorsの発現増加が特徴的であった。上記の結果より、AMPKの活性化が心不全の発症や進展を抑制し、その効果は虚血性や非虚血性など病因や病期にかかわらず認められることが明らかとなった。
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