研究概要 |
虚血再潅流心筋障害 モデル、ドキソルビシン心筋障害モデルやリポポリサッカライド (LPS) 心筋障害モデルなどにおいて、心筋特異的SOCS3欠損マウス (SOCS3-CKO)の心筋障害が抑制されることを見いだした。野生型マウスでは、再潅流3時間後にSOCS3の発現を認め24時間後まで持続していた。SOCS3の発現と逆相関するようにSTAT3の活性化は抑制されていた。SOCS3-CKOマウスの心臓では再潅流後のSTAT3の活性化が遷延増強していた。SOCS3-CKOマウスの心臓では、TUNEL染色により評価した心筋アポトーシスが野生型マウスに比べ優位に抑制されていた。アポトーシス関連分子のなかで、Bcl2ファミリーのアポトーシス抑制遺伝子Mcl-1の発現亢進をSOCS3-CKOマウスにおいて認めた。SOCS3-CKOマウスにおいて虚血再潅流後の心筋障害が抑制される機序をさらに明らかにするためにマイクロアレイ解析を行った。その結果、細胞周期に関連する遺伝子群、炎症反応に関連する遺伝子群、さらには細胞外刺激に反応し創傷治癒に関連する遺伝子群が、野生型マウスと比較しSOCS3-CKOマウスにおいて異なって発現調節を受けていることが明らかとなった。細胞周期に関連する遺伝子群にはCcna2, Ccnb2, Cdc7, Cdc23, Cdca5, Cdkn3, Top2aなどが含まれ、炎症反応に関連する遺伝子群にはNfkb2, Relb, Il1b, Il6, Nfkbiaなどが含まれていた。細胞周期に関連する遺伝子の役割は不明であるが、SOCS3-CKOマウスにおいて虚血再潅流後の心筋障害が抑制される機序に炎症経路の活性化の変化が深く関わっている可能性が示唆された。
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