研究課題/領域番号 |
23591095
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研究機関 | 独立行政法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
岩田 裕子 独立行政法人国立循環器病研究センター, 研究所, 室長 (80171908)
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キーワード | 心筋症 |
研究概要 |
拡張型心筋症、筋ジストロフィー症等の難治性疾患には決定的な治療法がなく、また虚血や高血圧などに起因する重症心不全を治癒する究極的な治療法はない。本研究では、これら筋変性疾患に共通する病態的特徴である持続的なCa2+濃度上昇に着目し、それを起こす有力な候補蛋白質、伸展刺激感受性イオンチャネル(TRPV2)の心筋における生理的、病態的意義を明確にするとともに、TRPV2が心疾患の有力な治療標的になることを確定することを目標としている。TRPV2の治療標的としての有効性を証明するためには、このチャネル活性を特異的に阻害したときに病態が改善するかどうか解明する必要があるが、現在のところTRPV2の特異的な阻害剤は開発されていない。今回は心筋症発症とTRPV2細胞膜発現との関係を明確にするためTRPV2の細胞膜発現を阻害する方法を検討し心筋症悪化への影響を検討した。TRPV2の細胞質ドメインを過剰発現させてドミナントネガティブ効果による細胞膜TRPV2濃縮の抑制を試みた。通常TRPV2が細胞膜に発現しているTRPV2-HEK293細胞にTRPV2のドメインIを導入すると細胞内への移行が促進され、細胞膜TRPV2が減少した。それに伴いアゴニストの反応が減弱した。他方、ドメインIIの導入ではこのような効果が認められなかった。心筋症心筋モデルに心筋特異的にこのドメインIを導入すると心筋症発症時期の遅延、心機能低下の抑制、死亡日令の延長が観察された。以上の結果は心筋症、心不全など筋変性疾患において細胞膜で活性化しているTRPV2は病態発症及び悪化に重要であること、活性化TRPV2を細胞内へ移行させ不活化させることで病態が改善されることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
心筋症・筋変性の進展において細胞膜TRPV2の活性化が非常に重要であることが明らかになったが、心筋特異的TRPV2KOマウスの作成が遅れていてTRPV2の生理的意義の解析がまだできていない。
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今後の研究の推進方策 |
心筋症心筋モデルに心筋特異的にTRPV2の細胞質ドメインIを導入すると心筋症発症時期の遅延、心機能低下の抑制、死亡日令の延長など病態が改善された。この細胞質ドメインIの詳細と細胞内への移行のメカニズムは不明である。分子メカニズム解明のためこのドメインの最小単位、特異性を同定するとともに相互作用蛋白質を同定する。 またTRPV2の心筋における生理的役割を解明するため心筋特異的TRPV2KOマウスおよびチャネル機能を失ったTRPV2変異体マウスの心筋生理機能をコントロールマウス心機能と比較検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
端数による残額が生じている。25年度は、最終年度であるため今まで明らかにしてきたことを論文などにして発表する。 発表するために現在の研究の弱点である細胞を用いた分子メカニズムに関しての基礎的研究を集中的に行う。 心筋細胞単離、細胞培養、抗体、遺伝子関連の試薬、イメージング、相互作用検討のための試薬、ペプチド、アゴニスト、シグナル伝達解析のための試薬の購入などに使用。
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