研究課題/領域番号 |
23591096
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
石森 直樹 北海道大学, 大学病院, 助教 (70399848)
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研究分担者 |
筒井 裕之 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70264017)
絹川 真太郎 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60399871)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ナチュラルキラーT細胞 / 動脈硬化 / 慢性炎症 / 免疫応答 / 脂質異常症 |
研究概要 |
動脈硬化症の発症進展では、血管組織でのマクロファージやリンパ球による持続的炎症が重要であるが、慢性化の分子基盤は不明である。ナチュラルキラーT(NKT)細胞は免疫応答を調節するTリンパ球亜群であり、動脈壁や内臓脂肪組織に局在し、動脈硬化症やメタボリックシンドロームの発症・進展で重要な役割を果たす。本研究は動脈硬化病巣における慢性炎症の基盤とる免疫制御機構をNKT細胞に着目して解析することを目的とした。研究計画1.培養細胞を用いたin vitro実験系でのNKT細胞の機能解析若齢ApoE欠損マウスより分離したNKT細胞では、IL-4存在下で培養した樹状細胞による抗原刺激でIFN-γを優位に分泌し、一方IFN-γ存在下で培養した樹状細胞による抗原刺激ではIL-4を優位に分泌した。すなわち、Th2型免疫応答ではNKT細胞はTh1型免疫応答を誘導する一方、Th1型免疫応答ではNKT細胞はTh2型免疫応答を誘導しており、NKT細胞を中心とした「負の調節機構」が存在していた。高コレステロール血症が持続する高齢ApoE欠損マウスより分離したNKT細胞では、この「負の調節機構」は確認されず、NKT細胞の機能障害が炎症慢性化の基盤となっている可能性が示唆された。研究計画2.肥満モデルマウス用いたin vivo実験系でのNKT細胞の機能解析上記in vitro実験で確認されたNKT細胞による「負の調節機構」が生体に与える影響を検討するため、若齢および高齢ApoE欠損マウスよりNKT細胞を分離し、NKT細胞欠損マウスに養子移入し、心血管組織や脂肪組織への炎症細胞浸潤を病理組織学的に評価している。高齢ApoE欠損マウスより分離したNKT細胞では、これらの「負の調節機構」を形成する免疫応答は減弱し、NKT細胞の機能障害が炎症慢性化の基盤であると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画1.培養細胞を用いたin vitro実験系でのNKT細胞の機能解析 若齢ApoE欠損マウスにくらべて高齢ApoE欠損マウスより分離したNKT細胞では、「負の調節機構」を形成する免疫応答が減弱していることは確認できたが、培養上清中のサイトカイン(IFN-γ;Th1型免疫応答、IL-4;Th2型免疫応答)を用いて評価しているため、実験ごとで測定値のばらつきが大きいため、現時点では統計学的な有意差は得られていない。研究計画2.肥満モデルマウス用いたin vivo実験系でのNKT細胞の機能解析 若齢および高齢ApoE欠損マウスより脾臓を摘出して細胞単離し、セルソーターを用いてNKT細胞(NK1.1+TCR+)を分離培養することに成功している。NKT細胞欠損マウスにNKT細胞を養子移入して、現在移入効率について確認を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画1.培養細胞を用いたin vitro実験系でのNKT細胞の機能解析 NKT細胞による「負の調節機構」を形成する免疫応答を正確に検出するため、培養上清中のサイトカイン(IFN-γ;Th1型免疫応答、IL-4;Th2型免疫応答)のほか、フローサイトメトリーを用いた細胞内サイトカイン染色など、多方面からの評価を検討している。研究計画2.肥満モデルマウス用いたin vivo実験系でのNKT細胞の機能解析 セルソーターを用いてNKT細胞(NK1.1+TCR+)を分離培養したのち、慢性炎症を呈する各種モデルマウス(高脂肪食投与マウス、ApoE欠損マウス、アンジオテンシンII持続投与マウス、5/6腎摘腎不全マウスなど)に養子移入して、慢性炎症遷延化にNKT細胞が最もかかわっているモデルを検索する。
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次年度の研究費の使用計画 |
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