研究課題
重症下肢虚血に対する治療法として、単核球細胞移植による血管再生治療の有用性が認められているが、この治療法には腎不全、糖尿病症例や高齢者を中心に約30%の治療無反応例(Non-Responder; 以下NRケース)が存在することも明らかとなっている。我々は本法の治療機序にNotchシグナルが不可欠であることを見出し、またNRケースにおいてNotchシグナルが低下していることを示唆する所見を得た。そこでNRケースに治療効果を有する新規治療法を開発することを目標に、NRケースとNotchシグナルとの関連、および抗体医薬によるNotchシグナル増強療法の妥当性を検証することを目的として本研究をデザインした。初年度はNRモデル動物の確立と、NRモデル動物の治療無反応性に、Notchシグナルが関与するか検証することとした。そこで腎不全モデル、糖尿病モデル、加齢モデルを作成したところ、糖尿病モデルおよび加齢モデルでは、対照マウスと比較して下肢虚血後の血流回復が遅延することが確認された。腎不全モデルは、下肢虚血後の血流回復に統計学的に有意な差を認めなかった。しかしこれら3モデルはいずれも、下肢虚血作成後にみられるNotchシグナルの増強が著明に減弱していることが見出された。今後は、これらNRモデル動物に単核球移植による血管再生治療を行い、治療効果の減弱が認められるか確認するとともに、NRモデル動物に対するNotch増強療法の有用性を検証する予定である。またNRケース予測診断のため、患者単核球によるNotchシグナル増強作用の定量法を開発する予定である。本邦では年間4000人を越える重症下肢虚血患者が新たに発症しているが、多領域に渡る集学的かつ高度な医療を行っても、治癒するのはわずか25%である。本研究により今後、新たな治療法が開発されれば、医学的・経済学的なインパクトは極めて大きい。
3: やや遅れている
平成23年度は東日本大震災の影響で研究施設の節電を余儀なくされたため、やむを得ず一部の研究成果(NRモデル動物に対する血管再生治療の効果判定)の確定が、次年度にずれ込んでしまった。
現在遅れを生じている研究内容について、必要物品の購入は平成23年度に済んでおり、結果は出ていないものの研究自体はすでに進行している。平成24年度中に研究計画の遅れは十分取り戻せるものと予想する。
該当せず
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Arterioscler Thromb Vasc Biol.
巻: 31 ページ: 2000~2006
10.1161/ATVBAHA.111.225144