研究課題/領域番号 |
23591101
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
黒田 忠 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 寄附講座助教 (60403078)
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研究分担者 |
中岡 良和 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90393214)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 動脈硬化 / 血管炎症 / Gab1 / KLF2 / KLF4 |
研究概要 |
研究代表者らはこれまでドッキングタンパク質Gab1が内皮機能維持に重要な役割を有することをGab1内皮特異的欠損(Gab1ECKO)マウスの解析を通じて見出し報告した(Circ. Res. 108, 664-75, 2011)。Gab1ECKOマウスは下肢虚血ストレス下で全例が下腿壊死を呈して虚血耐性の著明な低下を示したが、その背景にGab1が内皮細胞でのHepatocyte growth factor (HGF)とその受容体c-Metを介したシグナル伝達と虚血後血管新生に必須の役割を果たすことにあると報告した。 H23年度は「内皮細胞でのGab1欠損が内皮機能障害をもたらし動脈硬化を促進させる」と仮説を立てて、Gab1ECKOマウスとApoE欠損マウス(ApoEKO)を交配して二重欠損マウス(DKO;Gab1ECKO/ApoEKO)を作成した。オスのGab1ECKO/ApoEKOマウスとコントロール(ApoEKO)マウスを6ヵ月齢でAngiotensin II(AngII)を浸透圧ポンプで負荷(500ng/min/kg)すると、ApoEKOマウスに比して動脈硬化形成と動脈瘤形成が有意に促進されていた。AngII負荷後のDKOマウスの大動脈壁での炎症性サイトカインIL-6, IL-1β、TNF-αの発現はコントロールに比して有意に増加していた。また、DKOマウス大動脈壁での炎症性接着分子VCAM-1の発現とマクロファージ浸潤はコントロールに比して有意に促進されていた。大動脈からCD31陽性内皮細胞をMACSで精製して内皮機能維持に重要な転写因子KLF2とKLF4の発現を調べると、DKOマウスではコントロールに比して発現が有意に低下していた。以上より、内皮細胞のGab1はAngII依存性の血管炎症と動脈硬化を負に制御することが示唆された(Circ J. in press).
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H23年度のGab1ECKO/ApoEKOマウスの詳細な解析から、本研究のタイトルである「内皮機能障害から動脈硬化へ至る分子機構」に内皮細胞のGab1が関与することを見出すことが出来て論文発表1篇出来たことことから、おおむね研究は順調に進行していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
Gab1ECKO/ApoEKOマウスでのAngiotensin II(AngII)依存性動脈硬化・血管炎症の増悪にはGab1を介したFluid shear stress(FSS)依存性の血管内皮保護シグナルの伝達不全が背景にあったと推察される。そこで、今後はGab1のFSS依存性血管内皮保護シグナルにおける機能解析を一つの中心テーマとして進めたいと考えている。(1)Gab1のFSSおよびスタチンによる血管内皮保護シグナルにおける関与の検討:Gab1がFSS依存性にチロシンリン酸化されることとFSS依存性AKTおよびeNOSのリン酸化に重要であることはこれまでに既に報告されている。FSS、スタチンともにERK5活性化とそれに引き続くKLF2の遺伝子発現促進を誘導することも報告されており、そのシグナルへのGab1の関与を明らかにしたい。Gab1のFSS依存性シグナルへの関与が明らかになった場合、Gab1-ERK5を経由してERK5でリン酸化される標的分子の同定をしたい。(2)Gab1内皮細胞特異的過剰発現マウスの解析:Tie2-promoter下にGab1遺伝子を過剰発現するマウスが今後得られる予定であり、そのマウスの血管内皮機能、虚血後血管新生などを検討する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験試薬代:80万円マウス飼養・購入代:50万円旅費:20万円合計 150万円を予定している。
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