研究課題/領域番号 |
23591101
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
黒田 忠 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 寄附講座助教 (60403078)
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研究分担者 |
中岡 良和 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90393214)
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キーワード | 動脈硬化 / 血管炎症 / 内皮 / Gab1 / KLF2 / KLF4 / トランスジェニックマウス |
研究概要 |
研究代表者らは、ドッキングタンパク質Gab1が内皮機能維持に重要な役割を有することをGab1内皮特異的欠損(Gab1ECKO)マウスを詳細に解析してこれまでに報告した(Circ. Res. 108, 664, 2011)。さらに、「内皮細胞でのGab1欠損が内皮機能障害をもたらし動脈硬化を促進させる」と仮説を立てて、Gab1ECKOマウスとApoE欠損マウス(ApoEKO)を交配して二重欠損マウス(DKO;Gab1ECKO/ApoEKO)を作成した。オスのGab1ECKO/ApoEKOマウスとコントロール(ApoEKO)マウスを6ヵ月齢でAngiotensin II(AngII)を浸透圧ポンプで負荷(500ng/min/kg)すると、ApoEKOマウスに比して動脈硬化形成と動脈脈瘤形成が有意に促進されていた。大動脈からCD31陽性内皮細胞をMACSで精製して内皮機能維持に重要な転写因子KLF2とKLF4の発現を調べると、DKOマウスではコントロールに比して発現が有意に低下していたことから、内皮細胞のGab1はAngII依存性の血管炎症と動脈硬化を負に制御することが示唆されてこれを報告した(Circ J. 76, 2031, 2012). H24年度はGab1を内皮細胞特異的に過剰発現するトランスジェニックマウス系を構築した。Cre-loxP系を用いて、内皮細胞特異的に(1)胎生期から、(2)任意の時期に薬剤(タモキシフェン)依存性に過剰発現誘導できるマウスを作製した。(1)の目的にはTie2-Cre-Tgマウスを、(2)の目的にはVE-Cadherin-CreERT2-Tgマウスをそれぞれ用いてloxP-Stop-loxP-Gab1-Tgマウスと交配して作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H23年度のGab1ECKO/ApoEKOマウスの詳細な解析から、本研究のタイトルである「内皮機能障害から動脈硬化へ至る分子機構」に内皮細胞のGab1が関与することを証明出来て、論文発表することが出来た。さらにH24年度では、内皮細胞特異的にGab1を過剰発現するトランスジェニックマウスの作製を終えることが出来て、内皮機能におけるGab1の役割をさらに解明する準備を整えることが出来た。以上より、おおむね研究は順調に進行していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
Gab1内皮細胞特異的トランスジェニックマウス(Tie2CreTgマウスまたはVE-Cadherin-CreERT2マウス)で内皮特異的過剰発現をまず確認する。十分な過剰発現が見られた場合は、(1)大腿動脈結紮による下肢虚血ストレス、(2)ApoEノックアウトマウスとの交配を行ったうえで高脂肪食負荷又はアンジオテンシンII負荷をすることで動脈硬化・血管炎症のストレスをかけて、Gab1の内皮保護効果を検討する。 内皮保護効果が確認された場合は、in vitroでHUVECの系に立ち返り、Fluid Shear Stressを負荷した系でのGab1の機能を検討したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験試薬代:50万円 マウス飼養・購入代:20万円 旅費:10万円 を予定している。
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