研究課題/領域番号 |
23591102
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山本 浩一 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00528424)
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研究分担者 |
樂木 宏実 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20252679)
大石 充 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (50335345)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | G蛋白共役型受容体 / 細胞内シグナル伝達経路 / Angiotensin II 受容体 / 酸化LDL受容体 / 動脈硬化 / 複合体形成 |
研究概要 |
目的1) 酸化LDLによるAT1活性化の機序の詳細な解明LOX-1、AT1を安定発現させたCHO細胞を用いた検討では共免疫沈降法やin situ PLA法により両受容体が複合体を形成することが示唆された。またこの複合体形成はLOX-1と高い相同性を有するDectin-1では認めず特異的であることが示された。酸化LDLがAT1を活性化することの証明としてAT1のreduction of function mutantを作成してLOX-1とCos7細胞に共発現させたところ両受容体は複合体を形成したが酸化LDLによるG蛋白やERKの活性化は著しく抑制された。これらの結果より酸化LDLのLOX-1への結合は細胞膜上でLOX-1と複合体を形成するAT1を活性化することが証明された。目的2) 酸化LDLによるAT1活性化の病態生理学的意義の解明病態生理学的意義を検証する端緒としてマウス腹腔内に酸化LDLを注入しangiotensin IIと同様の昇圧反応を認めるか検討した。観血的血圧モニタリングにより野生型マウスに対する酸化LDL投与が一過性の昇圧反応を呈することが示された。またこれらの反応はAT1阻害薬を投与したマウスやAT1a欠損マウス、LOX-1欠損マウスでは認めずLOX-1, AT1依存性であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的を達成するため以下の計画を予定していた。目的1) 酸化LDLによるAT1活性化の機序の詳細な解明 計画A; 酸化LDLによるAT1活性化の更なる検証 計画B; AT1とLOX-1間のヘテロダイマー形成の普遍性と意義の検証 計画C; AT1とLOX-1の相互作用の更なる検証目的2) 酸化LDLによるAT1活性化の病態生理学的意義の解明 計画D; 動物モデルを用いた酸化LDLによる血管への影響のAT1依存性に関する検討 計画E; アンジオテンシンII非依存性、AT1依存性の動脈硬化促進作用の検討 in vitroの系を用いた計画A-Cにおける平成23年度の研究計画は概ね達成できた。 動物モデルを用いた計画D-Eの内、計画Dは概ね達成できた。計画Eはアンジオテンシノージェン欠損マウスの繁殖に遅延が生じているため遅れが生じているが今後も継続する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
目的1) LOX-1のAT1との結合領域を同定するためにLOX-1の一部をDectin-1と入れ替えたキメラコンストラクトを数種類作成しAT1との結合の有無の検討を行なう予定である。目的2) 動脈硬化における同現象の病態生理学的意義を検討するために現在Angiotensinogen/ApoE同時欠損マウスを作成しAT1依存性、angiotensin II非依存性の動脈硬化進展を検証する計画を進行中である。
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次年度の研究費の使用計画 |
策定した研究計画A-Eの内、既に終了したものを除き下記の研究計画を推進する。目的1) 酸化LDLによるAT1活性化の機序の詳細な解明 計画B; AT1とLOX-1間のヘテロダイマー形成の普遍性と意義の検証 我々はLOX-1と最も相同性の高いC型レクチン様受容体のDectin-1はAT1と結合しない結果を得ている。今後LOX-1とDectin-1のキメラプラスミドを作成することによりLOX-1とAT1の結合部位を同定する。また結晶構造解析等を用いてLOX-1とAT1の結合様式を推定し予測される結合部位に変異を導入したAT1やLOX-1を作成し両受容体の結合が消失することを確認する。またそのような変異受容体を導入したCHO細胞において酸化LDLによるGPCR活性化が消失するか検討し両受容体のダイマー形成が酸化LDLによるAT1活性化に不可欠か否かを検討する。目的2) 酸化LDLによるAT1活性化の病態生理学的意義の解明 計画E; アンジオテンシンII非依存性、AT1依存性の動脈硬化促進作用の検討 ApoE単独欠損マウス、アンジオテンシノージェン(AGT), ApoE同時欠損マウス、AT1a,ApoE同時欠損マウスの3グループを作成し過去の論文に従い生後12週より高脂肪食を7週間投与し大動脈と大動脈洞の動脈硬化の進行度をoil-red O染色を用いて評価する。各マウスより採取した大動脈切片を用いてコリン作動薬に対する弛緩反応を比較することで内皮機能障害の程度を比較し、ルシゲニン化学発光法やDHE染色などにより酸化ストレスの程度を比較検討する。またApoEとアンジオテンシノージェン同時欠損マウスに動脈硬化の進展を認めた場合ARBの投与により進行を抑制しうるか検討しアンジオテンシンII非依存性、AT1依存性のARBの新しい抗動脈硬化作用があるか否かを検討する。
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