研究課題/領域番号 |
23591105
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
宮田 昌明 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 講師 (00347113)
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研究分担者 |
松山 隆美 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (30145479)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 葉酸レセプターβ / 活性化マクロファージ / 動脈硬化 / 分子イメージング |
研究概要 |
本研究申請時に示した3つの研究項目ごとに研究実績を報告する。(1)抗FRβ抗体を用いた動脈硬化の新規治療法の前臨床研究:マウスFRβを遺伝子導入したマウスB300-19細胞からマウス抗FRβモノクローナル抗体を作成し、このマウス抗FRβ抗体を15週齢の雄性アポ蛋白E欠損マウスの尾静脈より3日おきに5回静脈注射し、17週齢から4週間の観察後、21週齢で動脈硬化病変面積を組織学的に定量解析した。マウス抗FRβ抗体のかわりに生理食塩水を注射したものをコントロールとした。動脈硬化病変は、抗FRβ抗体投与により 42% 減少した。さらに、抗FRβ抗体投与によりFRβ発現マクロファージやTNF-α 発現マクロファージは減少し、アポトーシス細胞は増加した。また、FRβ-mRNAとTNF-α-mRNA は抗体群で減少した。(2)可溶性FRβ測定系の確立と動脈硬化性疾患患者での測定:ヒトFRβを遺伝子導入したsf9細胞から、マクロファージ成分を欠損させた可溶性ヒトFRβを作成し、これに対するモノクローナル抗体の作成に成功した。(3)抗FRβモノクローナル抗体を用いた超音波分子イメージングの開発:先ず、distearoylphosphatidylethanolamine-PEG(2000)biotinとdistearoylphosphatidylcholineとpolyoxy-ethylene-40-stearateとを超音波処理してビオチン化されたマイクロバブルを作成し、 streptavidinとEZ-Link(Pierce社)を用い、FRβを認識するマイクロバブルを作成した。このFRβを認識するマイクロバブルをアポ蛋白E欠損マウスの尾静脈から注射して、小動物用超音波高解像度イメージングシステムを用いて画像解析したが、明らかなシグナルは認めなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究申請時には、以下の3つの研究を行う予定であったが、概ね順調に実験は進んでおり、その成果を基に国内特許を出願した。さらに、国際特許の出願に向けても準備を進めている。以下、3つの研究項目ごとに達成度について報告する。(1)抗FRβ抗体を用いた動脈硬化の新規治療法の前臨床研究:マウス抗FRβモノクローナル抗体により、動脈硬化モデルマウスであるアポ蛋白E欠損マウスの動脈硬化病変を抑制することが示された。この研究に関しては、予定以上に研究結果が出ており、ヨーロッパ心臓病学会2011(パリ)では、高得点演題であるFeatured Research Sessionに選ばれ口演発表した。また、日本循環器学会学術集会(2012年3月、福岡)においてもTopicセッションにて招請講演した。(2)可溶性FRβ測定系の確立と動脈硬化性疾患患者での測定:ヒトFRβを遺伝子導入したsf9細胞から、マクロファージ成分を欠損させた可溶性ヒトFRβを作成し、これに対するモノクローナル抗体を作成することができた。次は、この抗可溶性ヒトFRβモノクローナル抗体を用いELISAによる測定系を作成してゆくが、この研究も順調に進捗している。(3)抗FRβモノクローナル抗体を用いた超音波分子イメージングの開発:抗FRβモノクローナル抗体を用いFRβを認識するマイクロバブルを作成したが、動脈硬化モデルであるアポ蛋白E欠損マウスの動脈硬化病変描出には至っていない。抗体と結合したマイクロバブルは分子量が大きく、動脈硬化病巣内部に存在するFRβ発現マクロファージを認識するために組織内に浸潤することが出来ない可能性がある。この研究に関しては、方法論に限界がある可能性があり、他の方法による分子イメージングを検討する必要があると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
(1)抗FRβ抗体を用いた動脈硬化の新規治療法の前臨床研究:抗FRβモノクローナル抗体によりアポ蛋白E欠損マウスの動脈硬化病変を抑制することが示されたが、今後、抗FRβモノクローナル抗体に緑膿菌毒素を結合させたFRβイムノトキシンとの抗動脈硬化作用を比較する。具体的には、動脈硬化病変面積、動脈硬化巣におけるFRβ発現マクロファージやTNF-α 発現マクロファージ数、アポトーシス細胞数を比較する。(2)可溶性FRβ測定系の確立と動脈硬化性疾患患者での測定:抗可溶性ヒトFRβモノクローナル抗体を用いELISAによる測定系を確立する。次に、この測定方法を用い、急性冠症候群、狭心症、閉塞性動脈硬化症患者およびこれらの患者に年齢と性別を一致させたコントロール健常者の血中可溶性FRβ値を測定し、比較検討する。さらに、血清高感度CRP、可溶性LOX-1、MDA-LDL、冠動脈造影検査、血管内超音波検査、ABI (ankle brachial pressure index)値、baPWV (barachial-ankle pulse wave velocity)、CAVI (Cardio-Ankle Vascular Index)の動脈硬化指標と可溶性FRβとの関連を検討する。(3)抗FRβモノクローナル抗体を用いた超音波分子イメージングの開発:マイクロバブルによる超音波診断に関して、VCAM-1での動脈硬化病変の超音波分子イメージングを報告しているOregon Health and Science UniversityのLindner先生に相談し、指導を受ける。同時に、蛍光による分子イメージングにも着手し、抗FRβモノクローナル抗体をAlexa Fluor 488で標識しアポ蛋白E欠損マウスに投与して、MaestroTM in-vivo imaging systemにて動脈硬化病変の描出を試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究には抗FRβモノクローナル抗体を多量に使用するために、マウス抗FRβモノクローナル抗体作成に必要な培養関連試薬、ヌードマウスの購入、蛋白精製に必要な試薬を購入する。可溶性FRβ測定系の確立に必要なELISA作成キットとそれに必要な試薬に加え、同時に測定する血清高感度CRP、可溶性LOX-1、MDA-LDLなどの測定に必要なキットや試薬を購入する。また、抗FRβ抗体を用いた動脈硬化の動物実験に用いるアポ蛋白E欠損マウスの繁殖・飼育費にも使用する。研究成果発表のための国内学会旅費や論文の英文校正に係わる経費も必要である。
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