研究課題
脂質シャペロンファミリーのひとつである脂肪酸結合タンパクFABP4 (A-FABP/aP2)は脂肪細胞とマクロファージに存在し、代謝および炎症反応の両側面からメタボリックシンドロームの成因に深く関わることが示唆されている。最近、分泌シグナルペプチドを有さないもののFABP4が脂肪細胞から分泌されることが示された。さらには脂肪細胞/マクロファージ以外に末梢毛細管や傷害血管の血管内皮に異所性に発現する可能性が示唆されたが、それらの生理学的役割や意義については十分に解明されていない。本研究の目的は、分泌型FABP4および異所性FABP4が血管内皮機能や血圧とどのように関連しているかを検討することとした。血中濃度の解析では、正常血圧者に比べ本態性高血圧患者で有意に血中FABP4濃度が高値であった。FABP4濃度は有意に年齢、BMI、血圧、中性脂肪値と正に、グルコースクランプで測定したインスリン感受性の指標 M値と負に相関した。重回帰分析では、年齢、性別、BMI、中性脂肪値で補正してもM値および血圧が独立したFABP4濃度の説明変数であった。また、一般住民の無治療者での解析からもFABP4濃度と血圧の関連を確認した。さらに、降圧薬であるアンジオテンシンII受容体拮抗薬 (ARB) の投与により、FABP4濃度が低下する事を見いだした。マウスの高血圧モデルでの解析では、FABP4欠損マウスは野生型マウスに比べて血圧が低値であった。また、FABP4欠損マウス由来血管内皮細胞は野生型マウス由来の細胞に比べて、炎症マーカーの低下が認められた。一方、FABP4過剰発現させた血管内皮細胞では逆に炎症マーカーの上昇が認められた。今回の検討から、FABP4は高血圧治療の新たなターゲットになる可能性が強く示唆され、今後のさらなる検討が期待される。
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