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2012 年度 実施状況報告書

Thバランスの制御による難治性喘息に対する新規治療法の探索

研究課題

研究課題/領域番号 23591112
研究機関筑波大学

研究代表者

森島 祐子  筑波大学, 医学医療系, 講師 (10375511)

キーワード難治性喘息 / Th17細胞 / RORγt
研究概要

喘息は慢性気道炎症を特徴とする疾患であり、その病態にはTh2サイトカインが中心的な役割を担っている。しかし一方で、臨床試験において抗Th2サイトカイン抗体やIFNγは治療薬として期待された抗炎症効果が認められず、Th1/Th2バランスに基づいた概念だけでは説明できない病態の存在が示唆されている。難治性喘息では、しばしば気道内において好酸球のみならず好中球の浸潤を認め、ステロイド抵抗性を示すことが知られている。これらの患者群では、喀痰中のIL-17濃度が増加し、喘息の重症度とIL-17レベルが相関するとの報告もあり、IL-17が難治性喘息の成立に関与している可能性が推察される。IL-17産生細胞であるTh17細胞は、Th1細胞やTh2細胞と共通の前駆細胞より分化し、その分化誘導には転写因子RORγtが重要であることが明らかにされている。そこで、RORγtの過剰発現によって誘導されるTh17サイトカイン環境が難治性喘息をもたらす要因の一つではあるという仮説をたて、研究を行った。
まず、RORγtを過剰発現する遺伝子改変マウス (RORγt-tg)と、Th2分化誘導に重要な転写因子GATA-3を過剰発現する遺伝子改変マウス (GATA-3-tg)を用い、OVA誘導性気道炎症におけるGATA-3、RORγtの役割について検討した。その結果、GATA-3-tgにおいては、Th2サイトカインが優位な環境下で好酸球性気道炎症が誘導され、一方でRORγt-tgにおいては、IL-17A、IL-22などのTh17サイトカインが優位な環境下で好中球性気道炎症が誘導された。同時に、RORγt-tgの肺では、KC、MIP-2などの好中球走化因子や、IL-6が有意に増加していることを確認した。
今後は、鍵となる炎症性メディエーターに対する抑制実験を行い、気道炎症を制御できるか検証する。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

Th2細胞の特異的転写因子であるGATA-3を過剰発現させたマウス(GATA-3-tg)と、Th17細胞の特異的転写因子であるRORγtを過剰発現させたマウス(RORγt-tg)を用いてOVA抗原特異的気道炎症のモデルを確立した。それぞれの系統のマウスにOVA100μgをday0およびday14に皮下注(感作)し、day28にOVA10μgを経鼻的に投与(曝露)した。いずれの系統の抗原特異的気道炎症モデルにおいても、OVA曝露による気道抵抗の上昇がみられ、喘息のモデルになり得ることを確認した。
OVA曝露後に各系統の喘息モデルマウスにおいて、気道抵抗、気管支肺胞洗浄液(BALF)中の細胞数、細胞分画、肺組織の(HE染色)にて気道炎症のフェノタイプ、肺リンパ球の細胞内サイトカインやBALF・肺組織におけるサイトカイン・ケモカインの発現を解析した。
研究の達成度としては、概ね予定どおりと考えている。

今後の研究の推進方策

予備実験の段階で、RORγt-tg喘息マウスとGATA-3-tg喘息マウスとでステロイド反応性が異なっていたことから、昨年度から引き続き、ステロイド抵抗性を獲得した機序について検討する。ステロイド抵抗性にはリガンド結合活性をもたないglucocorticoid receptorβ(GRβ)の増加が関与することが報告されており、我々もGRβに注目し、RORγt-tg喘息マウスのBALFや肺組織においてGRαとGRβが量的、質的に変化していないかreal-time PCR法およびWestern immunoblot法にて解析する。加えて、ステロイドがクロマチンレベルで抗炎症作用を発揮するためにはactivating histone deacetylase 2 (HDAC2)によるヒストン脱アセチル化が重要であるが、このHDAC2の発現もreal-time PCR法にて解析する。
さらに、ステロイド抵抗性好中球性気道炎症において特異的に変動するメディエーターに対する抑制実験を行い、ステロイド抵抗性好中球性気道炎症を制御できるか検証する。
一方、気道リモデリングも喘息の難治化の重要な要因であることから、気道上皮の杯細胞化生、基底膜肥厚、平滑筋の過形成などにおけるTh17細胞の役割についても検討を加える予定である。

次年度の研究費の使用計画

該当なし

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2012

すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] 気道炎症と好中球2012

    • 著者名/発表者名
      森島祐子,檜澤伸之
    • 雑誌名

      Respiratory Trends

      巻: 2 ページ: 12-15

  • [学会発表] OVA誘導性好中球性気道炎症に対する抗IL-6受容体抗体の有効性2012

    • 著者名/発表者名
      阿野哲士、森島祐子、石井幸雄、大塚茂男、松山政史、中澤健介、松野洋輔、川口未央、坂本 透、檜澤伸之
    • 学会等名
      第62回日本アレルギー学会秋季学術大会
    • 発表場所
      大阪
    • 年月日
      20121130-20121130
  • [学会発表] Th2/Th17 milieu determines the phenotype of airway inflammation in mice2012

    • 著者名/発表者名
      Ano S, Morishima Y, Ishii Y, Yamadori T, Masuko H, Kaneko Y, Fujita J, Ohtsuka S, Matsuyama M, Nozato K, Kawaguchi M, Sakamoto T, Hizawa N
    • 学会等名
      2012 International Conference of American Thoracic Society
    • 発表場所
      San Francisco (USA)
    • 年月日
      20120520-20120520
  • [学会発表] アレルギー性気道炎症の多様性における転写因子RORγtおよびGATA-3の役割2012

    • 著者名/発表者名
      阿野哲士、森島祐子、石井幸雄、大塚茂男、松山政史、川口未央、坂本 透、檜澤伸之
    • 学会等名
      第52回日本呼吸器学会総会
    • 発表場所
      神戸
    • 年月日
      20120420-20120420

URL: 

公開日: 2014-07-24  

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