研究課題/領域番号 |
23591113
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
廣瀬 晃一 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90400887)
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研究分担者 |
高取 宏昌 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (30568225)
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キーワード | 気管支喘息 / Th2細胞 / Th9細胞 / ハウスダスト |
研究概要 |
気管支喘息は気道を場としたアレルギー性炎症であり、その病態の中心には抗原特異的Th2細胞と、IL-5、IL-13を始めとしたTh2サイトカインが存在することが示されている。しかし、近年既存のTh1細胞、Th2細胞に加え、Th17細胞、Th9細胞(IL-9産生性CD4陽性T細胞)が存在することが示された。我々はこれまでに重症喘息の病態においてはTh2細胞のみならず、Th17細胞が存在しTh2細胞依存的に発症するアレルギー性炎症の増悪に関与することを示してきた。 本研究では、アレルギー性気道炎症におけるTh9細胞の役割を明らかにすることを目的とした。 まず、アレルギー性気道炎症におけるTh9細胞の働きを明らかにするためにハウスダスト(HDM)誘発性気道炎症モデルを作成し、肺浸潤T細胞ならびに所属リンパ節におけるT細胞のサイトカインプロファイルを細胞内サイトカイン染色法により検討した。 その結果、HDMによりアレルギー性気道炎症を惹起した肺への浸潤T細胞、ならびに縦隔リンパ節内のT細胞にTh9細胞が存在することを見出した。また、これらのTh9細胞はIL-13、IL-17は産生していないことから既存のTh2、Th17細胞とは異なる細胞集団であると考えられた。 これまでにTh9細胞分化にはIL-4、TGF-betaが必須であることが示されているが、一方で樹状細胞に発現する如何なる受容体がTh9細胞分化に関与するかは一切不明である。我々は現在、アレルギー性気道炎症の場における樹状細胞のTh9細胞分化制御機構を解析している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時には1年間でTh9細胞分化における詳細な分子機構を解明し、2年間でアレルギー性気道炎症におけるTh9細胞の働きを解明することを目標としていた。 しかし、この間に国内外よりTh9細胞分化における転写因子の働きに関する報告が相次いだことなどから、申請者らはアレルギー性気道炎症におけるTh9細胞の働きを解明することを先行させた。既にモデルマウスの作成に成功しTh9細胞の同定に至っており、さらにTh9細胞の詳細な解析に着手している。 さらに申請者らはT細胞分化を制御する樹状細胞に着目し、樹状細胞がTh9細胞分化を制御するメカニズムの解析にも着手している。 以上より国内外の研究動向から当初の計画の変更をやむなくされたものの、本研究はおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに樹状細胞に発現するTLRがTh1細胞分化に、またDectin-1、Dectin-2がTh17細胞分化に関与することが示されている。しかし一方において樹状細胞の如何なる受容体がTh9細胞分化を制御するかは一切不明である。今後は樹状細胞のTh9細胞分化における働きを明らかにすることを目的として研究を進めている。 また、本研究者らはTh9細胞分化を促進するIL-25が、血管炎の発症に関与することを見出している(Kawashima S et al. Int Arch Allergy Immunol.in press)。我々が見出したこれらの知見を基として、今後はTh9細胞の血管炎発症における働きを解析するとともに、Churg-Strauss症候群のモデルマウスの作成を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
これまでに本研究の主要な解析は終了しており、次年度は抗体等の消耗品に平成25年度は60万円研究経費を要する。 一方、本学では、SPF環境下での動物飼育施設、P2施設等の設備は整っており、また、予定している研究に必要なフローサイトメーター、気道過敏性測定機、共焦点顕微鏡、Real-time PCR解析機、キャピラリー式DNAシークエンサー等の設備も既に本学内で準備されているため、科学研究費補助金を大型機器等、備品の購入にあてる必要は生じない。 また研究は、本研究者、および本学所属のスタッフと大学院生によって施行されるため、科学研究費補助金を人件費として使用する予定もない。 研究成果発表等に必要な旅費も公費を使用する予定であり、科学研究費補助金を使用する予定はない
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