研究実績の概要 |
咳喘息は咳のみを症状とする喘息の亜型である。本症がなぜ咳のみを呈するのか、一部の症例が典型的喘息に移行する機序は何か、難治例が少なくないのは咳喘息に特異的な病態生理学的特徴が存在するためか、これらの疑問は明らかにされていない。本研究では当科外来患者を対象に、典型的喘息と咳喘息という喘息の2つの表現型を規定する因子を、後ろ向き研究と前向き研究とにより遺伝子多型の解析も含めて包括的に追求する。これにより上記課題の解明を目指し、咳喘息難治化の機序ひいては咳の病態そのものの本態、さらに喘鳴や喘息の発症・難治化メカニズムという重要な問題にアプローチする。現在通院中の典型的喘息約600例、咳喘息約250例の既治療患者を対象に、各種遺伝子多型の検討を開始した。対象遺伝子は以下の通りである。 ・咳感受性や咳の惹起への関与が想定される遺伝子:ACE、ブラジキニンB2受容体, ニューロキニン2受容体, TRPV1, TRPA1, CTLA4, β2アドレナリン受容体 など ・Genomewide association study などで同定された喘息関連遺伝子や喘息の病勢に関与する遺伝子:IL-13, IL-1RL1/IL-18R1, ORMDL3/GSDMB, RAD50-IL13,HLA-DR/DQ, ADAM33, TGF-β1など また前向き研究の症例集積も進んでいる。対象は後ろ向き研究に準じて以下の3群である。1.典型的喘息:発症時から喘鳴や呼吸困難を呈していた患者(咳症状の有無は問わない)2.初診時に咳喘息と診断した後に典型的喘息に移行した例(移行の時期は問わない)3.初診時に咳喘息と診断し、その後2年間の治療観察中に典型的喘息に移行しなかった例
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