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2012 年度 実施状況報告書

呼吸器系の生活習慣病におけるSOCS分子の病的意義の解明と新規治療の探索

研究課題

研究課題/領域番号 23591121
研究機関九州大学

研究代表者

福山 聡  九州大学, 大学病院, 助教 (50380530)

研究分担者 松元 幸一郎  九州大学, 大学病院, 講師 (60325462)
キーワードSOCS / COPD / 気管支喘息
研究概要

慢性閉塞性肺疾患や気管支喘息は呼吸器系の「忘れられた生活習慣病」として位置づけられ、慢性閉塞性肺疾患は有病率・死亡率ともに増加傾向であり、気管支拡張薬以外の治療法の確立が望まれている。また、喘息もステロイド抵抗性の難治性喘息患者は存在しており、新規治療法の確立が急務である。サイトカインの抑制性シグナル伝達因子であるSuppressor of cytokine signaling (SOCS)を標的とした遺伝子改変マウスを用いて閉塞性肺疾患病態モデルを確立し、これまでとは作用機序の異なる新規治療法を探索することを目的に研究を開始した。
気道上皮特異的SOCS3欠損マウスによる疾患モデル作成とその解析を行った。COPDや喘息ではタバコ煙やアレルゲン、あるいは病原体由来分子(LPSやウィルス由来RNAなど)によって気道上皮が最も傷害を受けるため、その病態解析は重要である。我々の研究室では、気道上皮特異的なSOCS3欠損マウス (SOCS3/CC10Creマウス)の作成に成功したため、(1)タバコ煙曝露COPDモデルを作成し、気腫性病変の程度や気道上皮からのIL-6の産生とそのSOCS3による調節的意義について形態測定法やELISA、RT-PCR、免疫組織染色、などを用いて検討する予定であったが、本モデル自体がうまく確立出来ず、検討途中である。(2)卵白アルブミン(OVA)で感作、吸入曝露し喘息反応を比較解析したところ、SOCS3欠損マウスで喘息反応が減弱することを確認した。(3)LPS気管内投与モデルを作成し、好中球性炎症の程度や気道上皮からのIL-6の産生とそのSOCS3による調節的意義についてELISAやRT-PCR、免疫組織染色などを用いて検討したが、残念ながら、野生型マウスと差が認められなかった。(4)さらに、JAK阻害剤の喘息モデルへの治療効果についても検討中である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

喘息モデルでの野生型とSOCS3欠損マウスでは差が見られたが、LPS気管内投与モデルでは明らかな差は認めなかった。これらのモデル解析に関しては予定通り順調であるが、タバコ煙曝露によるCOPDモデルの作成に苦慮している。本モデルでは、気腫性病変の程度や気道上皮からのIL-6の産生とそのSOCS3による調節的意義について形態測定法やELISA、RT-PCR、免疫組織染色、などを用いて検討する予定であるが、モデルそのものが確立出来ておらず、検討途中の段階である。よって、骨髄細胞特異的SOCS1、SOCS3欠損マウスでも、COPDモデル作成とその解析を行う予定であったが未だ出来ていない。
COPDや喘息では好中球、マクロファージ、好酸球、肥満細胞といった骨髄由来細胞だけでなく、T細胞の病的活性化によるサイトカインの過剰産生が病態の進展をもたらしている。この病的活性化には何らかの制御分子の機能不全が想定され、SOCS1はその有力な候補である。そこで我々はT細胞特異的なSOCS1-KOマウス(SOCS1/Lck-Creマウス)を作成した。本マウスではT細胞においてSOCS1が欠損しており、COPDや喘息のT細胞におけるSOCS1の病態生理学的意義を検討するのに最適といえる。本マウスでもタバコ煙曝露COPDモデル予定であるが未だ確立できていない。OVA喘息モデルでは、気道過敏性、気管支肺胞洗浄液中の炎症細胞とサイトカイン・ケモカイン濃度、PAS/AB組織染色による杯細胞化生を比較解析中である。SOCS1欠損によって最も産生が過剰になるサイトカインとしてIFN- γが想定され、そこでタバコ煙やアレルゲン曝露の途中で抗IFN- γ中和抗体を投与し、病変に対するその影響を解析する予定であるが、本検討もまだ出来ていない。また、JAK阻害薬の喘息モデルへの効果についても検討中である。

今後の研究の推進方策

COPDではマクロファージによる異物の排除やアポトーシス細胞の排除が重要である。この現象はエフェロサイトーシスと呼ばれ、COPDではエフェロサイトーシス能が低下していることが報告されている。最近、我々は肺胞マクロファージのエフェロサイトーシス能がタバコ煙暴露によって減弱し、その過程にはヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)活性の低下が関わることを明らかにした(論文投稿中)。
HDACはサイトカインの産生やサイトカインシグナル伝達のおけるエピジェネティックな制御を担う重要な酵素群と考えられている。この、エフェロサイトーシスの解析は、今までin vitroでしか行っていなかったため、やはり肺気腫モデルの確立が急務と考えている。COPDのタバコ煙曝露モデルの確立が困難であるため、in vitroでの培養細胞での解析も進める必要がある。
各SOCS欠損マウスでの喘息モデルでの解析は上記の通り、比較的順調に進んでいる。また、JAK阻害薬の喘息モデルへの効果についても順調に検討が進んでいる。

次年度の研究費の使用計画

主にマウスの購入や管理費に使用し、その他、ELISAキット、FACSやウェスタン用抗体の購入に使用予定である。これらは本研究を遂
行するに当たり必須のものである。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2012

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] JAK阻害薬#69の好酸球性気道炎症への影響2012

    • 著者名/発表者名
      北島裕子、福山聡、松元幸一郎、井上博雅、中西洋一
    • 学会等名
      第62回日本アレルギー学会秋季学術大会
    • 発表場所
      大阪市
    • 年月日
      20121129-20121201

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公開日: 2014-07-24  

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