研究概要 |
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は喫煙に関連する慢性進行性の呼吸器疾患で、進行例では日常活動や生活の質の低下さらには在宅酸素あるいは補助呼吸療法を強いられる。我が国におけるCOPD患者のうつ状態あるいは睡眠状態に関する報告は無かった。 また、COPD患者におけるうつ病合併に対する有用なバイオマーカーは無かった。感情を制御する物質として、神経伝達物質であるセロトニン、ドパミン、エピネフリンやノルエピネフリンなどのモノアミンが知られている。うつ合併COPD患者におけるモノアミンおよびその代謝物質との関係を示した報告はなかった。 そこで、我が国におけるCOPD患者のうつ状態や睡眠障害の併存率について検討し、前向き観察試験においてうつおよび睡眠障害併存がCOPD患者予後に及ぼす影響に関する研究を行い、うつ合併COPD患者の発見のバイオマーカーとして、セロトニン、ドパミン、エピネフリンおよびノルエピネフリンの代謝産物である血漿中5-ハイドロキシインドール酢酸(5-HIAA)、ホモバニール酸および3-メトキシ-4-ハイドロキシフェニルエチレングリコール測定の有用性について検討とした。 COPDは健常人と比較して、うつおよび睡眠障害併存率(95%CI, p値)は、それぞれ7.6(1.0-56, p=0.03)と1.8(1.0-3.2, p=0.04)であった。しかも、うつ併存COPD患者は早期に増悪や入院を経験し(p<0.01)、うつや睡眠障害併存COPD患者は年間の増悪および入院回数が有意に高かった(両、p<0.01)。 うつ合併COPD患者の血漿中5-HIAAは、非喫煙健常者(p=0.04)および非うつ合併COPD患者(p=0.022)に比較して、有意に高値であった。COPD患者において、血漿5-HIAA濃度とうつ重症度に有意な相関を得た(r=-0.24, p=0.05)。
|