研究課題
本研究ではcJun阻害を利用した非小細胞肺癌(NSCLC)の癌幹細胞を標的にした治療法の開発を目標とし、その基盤となる研究を行った。昨年度までの研究で、癌幹細胞が濃縮されると考えられている無血清培地によるspheroid形成培養を、種々のNSCLC細胞株(PC-3、NCI-H1975、NCI-H1299、およびA549)で確立し、NCI-H1299細胞においては、cJun dominant negative mutantの誘導によって、spheroid形成能が低下することを見出した。しかし、spheroid形成培養したNCI-H1299細胞とA549細胞をNOD/SKIDマウスへ移植したところ、コントロールの単層培養した細胞と比較し有意な腫瘍形成能の上昇を認めなかった。一方、研究代表者は、エピジェネティクス制御を介し幹細胞の維持に関係するヒストンメチル化酵素EZH2がNSCLCで高発現し予後不良因子であることを報告していたが、昨年度の研究で、EZH2阻害剤のDZNepが、正常細胞と比べ上記のNSCLC細胞の増殖を強く抑制し、G1期停止とアポトーシスを誘導することを見出した。本年度は、EZH2阻害の抗腫瘍効果を高めるために、エピジェネティクス制御の中心を担うヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)の阻害剤SAHAとの併用効果を検討した。DZNepとSAHAの併用は各細胞株の増殖を相乗的に抑制し、EZH2の発現とヒストンH3K27のトリメチル化をDZNep単独よりも低下させた。併用によりp27上昇とcyclin A低下を強く認め、相加・相乗的にアポトーシスを誘導した。以上より、幹細胞シグナルの一つであるEZH2の抑制がNSCLC細胞の増殖に重要な役割を果たし、共にエピジェネティクスを制御するHDACとの同時阻害によって、相乗的な抗腫瘍効果が得られる可能性が示唆された。
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