研究課題
4つのヒト肺癌細胞株(扁平上皮癌、腺癌、大細胞癌、小細胞癌の各細胞株)と2つの非癌細胞株に対する、メトホルミン、シスプラチンによる抗腫瘍活性を a) 細胞増殖曲線 b) colonogenic assay により解析し、以下の結果を得た。1) メトホルミンは全ての肺癌細胞株に対し、用量依存的に増殖抑制効果を示したが、2つの非癌細胞株に対しても同様の効果を示し、腫瘍細胞非特異的であった。2)上記の増殖抑制作用は、メトホルミンの曝露時間が10日間の場合に認められるが、1~24時間では認められず、その作用が cytostatic であることを示唆した。3)Hoechst 染色、caspase 活性によりアポトーシスを解析した結果、小細胞肺癌株では著明なアポトーシス誘導を認めたが、それ以外の肺癌細胞株では認めなかった。一方、FACSによる細胞周期解析ではいずれの細胞株でもG0/G1期に集積する傾向を認めた。4)シスプラチンとの併用実験では、腺癌細胞株を除いた全ての細胞株で、メトホルミンはシスプラチンの抗腫瘍効果を減弱することが示され、特に高濃度シスプラチン曝露ではその効果は特に顕著であった。 以上より、メトホルミンは細胞増殖抑制作用を示すが、腫瘍細胞非特異的であり、cytostatic 効果であること、その機序は細胞株により異なるが、小細胞肺癌株ではアポトーシス誘導が、それ以外の細胞株(腺癌、扁平上皮癌、大細胞癌)では細胞周期のG0/G1ブロックが大きく関与すること、シスプラチンとは拮抗的に作用することが示された。本年度の研究により、メトホルミンは癌治療に有用性がある可能性が強く示唆されたが、同時に臨床応用にあたっては併用薬剤の種類、用量、タイミングを考慮する必要があることが示唆された。以上は Oncology Reports に投稿し、in press となっている。
2: おおむね順調に進展している
申請時の計画通りの進展であり、次年度の研究準備も整っている。
1) In vitro におけるメトホルミン + ゲフィチニブ併用実験(EGFR 遺伝子変異を有する PC-9 に対して)を行う。本年度と同様の方法に加え、癌幹細胞マーカー候補の細胞マーカーにより FACS ソーティングを行い、phenotype 毎の解析を行う。2) A549 細胞、PC-9 についてはシスプラチン耐性亜株が入手可能である。薬剤耐性株を用い、メトホルミンによる癌幹細胞障害により、薬剤耐性が克服可能かどうか予備的検討を行う。3) 上記 in vitro の結果に基づき、in vivo での併用実験をヌードマウス(または SCID マウス)を用いた xenograft モデルを用いて行うことにより、cytotoxic agents あるいは EGFR チロシンキナーゼ阻害薬によりいったん腫瘍縮小した後、再増大するモデルにおいて、メトホルミンを使用することによる再増大抑制効果を検討する。Cytotoxic agentsおよび EGFR-TKI による治療では癌幹細胞が残存するためいったん縮小の後、間もなく再増大すると考えられるが、メトホルミンを併用し、癌幹細胞を特異的に障害することにより、再増大が抑制されると期待される。
平成23年度の成果を論文投稿し、受理されたので、掲載料、別冊費用がかかる。本研究に係わる研究者の多くが細胞培養を頻繁に行うため、細胞培養のための遠沈器が不足しているので、備品として購入する。それ以外はマウス、プラスチック器具、薬品などに使用する。
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Oncology Reports
巻: in press ページ: in press
10.3892/or_xxxxxxxx