研究課題
特発性肺線維症(IPF)は、原因不明で進行性かつ予後不良の肺疾患であり、有効と言える治療法が確立されていない。IPFでは、肺癌合併のリスクが高い一方、分子標的治療薬である上皮細胞成長因子受容体(EGFR)のチロシンキナーゼ阻害剤はIPF併存肺癌患者でIPF増悪の高リスクとされる。本研究では、ブレオマイシンのマウス肺線維症モデルを用い、線維化および線維芽細胞や平滑筋細胞の増生・収縮、さらには上皮間葉転換(EMT)において、EGFRファミリーとそのリガンド、プロテオグリカンの関与を明らかとし、治療標的となりうるか探ることを目的とした。Balb/cおよびC57BL6へのブレオマイシン投与で胸膜直下に優位な線維化がC57BL6により顕著にみられた。collagen定量ではBalb/cに対し、C57BL6ではcollagenの経時的増加が示唆された。また肺組織のRT-PCRで、EGFRがBalb/cでは経時的増加傾向がみられ、C57BL6では減少している可能性が示唆され、HER2やHER4でも同様の傾向がみられた。EGFRリガンドではamphiregulin, epiregulinが、プロテオグリカンではversicanやdecorinがC57BL6で発現増加が示唆された。以上より、繊維化を起こしやすさが異なる系統のマウス肺組織ではEGFRやその一部のリガンド及びプロテオグリカンの発現が異なる可能性が示された。従って、肺の線維化の過程においてEGFRの発現やプロテオグリカンの発現の変化が関与している可能性が示唆されると考えられた。われわれは同時にTGF-β1やTNFS14によるEMTについての検討やヒスタミンによる線維芽細胞の収縮についての検討を行っており、今回の結果と合わせて今後、更に検討を進めてゆく上での基礎的な知見が得られたと考える。
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Experimental Lung Research
巻: 未確定 ページ: 未確定
Biochem Biophys Res Commun
巻: 428(4) ページ: 451-7
10.1016/j.bbrc.2012.10.097