研究概要 |
分子標的薬剤として使用されている難治疾患・癌疾患治療薬剤は、薬剤効果が優れている反面、薬剤による肺障害を誘発する報告例が近年増加している。特に、この障害発症は民族間で相違が認められることから、遺伝的要因が関与している可能性が示唆されている。この遺伝的要因解明のために、我々は、薬剤性肺障害を起こした症例と、起こさなかった症例について、Affymetrix社のGeneChip Human Mapping 500K Array Set (500,568 SNPs)を用いた相関解析(GWAS: Genome-Wide Association Study)を行い、薬剤性肺障害発症に統計学的有意(p<0.0001)な相関を示す候補遺伝子を幾つか報告してきた(HIVEP3 1p34.2,NME 1q24.2, IL17RD 3p14.3, ATP11B 3q26.33, SCRCS3 10q25.1, PAAF1 11q 13.4, CAND1 12q14.3, COL4A2 13q3.4, SLC39A11 17q25.1, CABLES1 18q11.2)。 今回、GWAS解析時(発症例19例、非発症例14例)より多くの症例数(発症例58例、非発症例66例)が収集されたので、これらのサンプルについて薬剤性肺障害発症感受性・抵抗性についての確認試験を行った。解析はHIVEP3 (Human Immunodeficiency Virus Type I Enhancer-Binding Protein 3)とNME7 (NonMetastatic Cells 7)遺伝子領域内に局在する単塩基多型(SNPs: Single Nucleotide Polymorphisms)についてABI TaqMan SNP genotyping assayを行い、相関の有無を確認した。 その結果、HIVEP3遺伝子内に設けた3種類のSNP (rs10493099, rs710235, rs2165303)は何れも肺障害発症に正の相関を示した(p<0.0019, R.R.=2.28)。また、NME7遺伝子についても、3種類のSNPsと強い正の相関を示した(rs3820056:p<6.03 x 10-8, rs9633334:p<6.44 x 10-5,rs6688038:p<7.63 x 10-7)。
|