研究課題/領域番号 |
23591144
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
近藤 征史 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00378077)
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研究分担者 |
佐藤 光夫 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (70467281)
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キーワード | 肺癌 / マイクロリボ核酸 |
研究概要 |
染色体の欠失領域より、多くの癌抑制遺伝子が単離され、その機能が同定され、肺癌の診断や治療の向上を目指し、これらの癌抑制遺伝子異常の早期検出や機能修復に関する研究が行われてきている。最近、マイクロリボ核酸(マイクロRNA)が遺伝子の発現、翻訳を制御することが判明し、発癌過程において、癌関連遺伝子の発現制御することにより、重要な役割をはたすことが知られている。本研究において、応募者が以前より解析に従事してきた第3番色体の短腕の欠失領域やEMT・癌幹細胞に関連するマイクロRNAの肺癌発生過程における関与を明らかにすることにより、癌の診断や治療の向上を目指す研究である。 肺癌で高頻度の欠失領域である第三染色体短腕(3p21.3領域)に存在するセマフォリン3F(SEMA3F)の遺伝子内に存在している miR-566の解析を行った。肺癌細胞株と臨床検体よりDNAを抽出して、プロモータ-領域およびマイクロRNAの塩基配列の検索をおこなった。既知の遺伝子多型を認めたが、それ以外の塩基配列の変化を認めなかった。SEMA3FとmiR-566の発現のパターンを比較検討したが、多くの肺癌細胞株で発現の低下を認めたが、従来いわれているようにマイクロRNAが存在している遺伝子(SEMA3F)の発現と必ずしも一致していなかった。miR-566の発現の低下している2種類の肺癌細胞株に、合成microRNAを導入して、細胞増殖能を検討したが、特に変化を認めなかった。この染色体領域には、メチル化により発現の低下を生じる遺伝子が複数存在してており、miR-566のプロモーター領域のDNAメチル化の解析を継続しておこなっている。 また、肺癌幹細胞に関連するマイクロRNAを探究し、候補としてmiR-205を見いだして、その機能を、細胞増殖能やsphere形成で検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
肺癌における、高頻度の欠失領域に存在するマイクロRNAの発現、およびプロモーターの変異解析は、終了し、機能を評価するめに、過剰発現させて、その生物学的な特性を評価できた。 当初の候補として、miR-566の発現、機能解析の結果、直接、腫瘍抑制の効果を認めなかったこと、このマイクロRNAが標的としているたんぱく質を検索して、候補の遺伝子の発現を検討しているが、現在ところ標的となるたんぱく質を同定できていない。ただ、このマイクロRNAが腫瘍特異的にメチル化されている可能性はあり、診断において有用な指標になる可能性はあると考える。 腫瘍幹細胞は、肺癌に生物学的な特性を理解するためにも、治療抵抗性の克服にも重要であるので、それに関与しているマイクロRNAの検討をおこなっており、shere形成能と密接に関与している候補マイクロRNAの機能を現在、解析して、治療標的になりうるかを検討している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の方針として、現在解析中のmiR-566に加えて、肺癌の他の高頻度の欠失領域に存在しているマイクロRNAの発現、変異検索および機能解析を行い、診断、治療標的になりうるかを検討していく。同時に、プロモーター領域のメチル化等を臨床検体を用いて、検討する。 癌幹細胞の性質と関連しているshere培養において、発現が変化しているマイクロRNAを検索して、幹細胞の性質に関与しているマイクロRNAの同定および機能解析を継続しておこなう。
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次年度の研究費の使用計画 |
マイクロRNAの発現定量、細胞株へのマイクロの導入のための試薬、マイクロRNAの標的となるたんぱく質の定量のための抗体などの購入のために研究費を使用する
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