研究概要 |
H23年度、H24年度は肺癌細胞、正常気管支上皮細胞を用いたEMTモデル樹立を行った。 最終年度はEMT誘導マイクロRNAとして知られる,miR-221, miR-222の肺癌の発生、および進展における役割を調べた。miR-221, miR-222の正常気管支上皮細胞への導入は、EMTを示唆する形態的、およびEMT関連遺伝子発現の変化を起こした。しかし、EMT関連の癌悪性形質である浸潤能、足場非依存性増殖能は付与しなかった。さらに、miR-221, miR-222導入の肺がん細胞への影響を調べた。これまでの報告では、miR-221, miR-222導入はH460肺がん細胞株の浸潤能を増強させた。これは、miR-221, miR-222の癌遺伝子としての機能を示唆した。一方で、我々の実験では、miR-221, miR-222は一部の細胞の増殖を促進したが、その他の細胞においては、逆に増殖を抑制した。これは我々が調べた限りにおいて、miR-221, miR-222の肺がんにおける腫瘍抑制性の機能を示した最初のデータであり、これらのマイクロRNAの治療薬としての利用可能性を示唆した。次に、このmiR-221, miR-222による腫瘍抑制機能のメカニズム解析をおこなった。FACSによる細胞周期解析と切断カスペース3のウエスタンブロットによるアポトーシス解析を行った。細胞周期解析は一部の細胞においてmiR-221, miR-222がS期停止を起こすことを示した。また、一部の細胞においてmiR-221, miR-222はアポトーシスを起こした。これらの結果は、miR-221, miR-222が肺がん細胞の増殖をS期停止やアポトーシスを介して抑制することを示す。以上のデータはmiR-221, miR-222の肺癌に対する新規治療薬としての可能性を初めて示した点において重要であると考える。
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