研究実績の概要 |
睡眠時無呼吸症候群(sleep apnea syndrome:SAS)は睡眠呼吸障害(sleep- disordered breathing:SDB)の一つで,睡眠中の低酸素血症が特徴である.SDBのうち,最も頻度の多い疾患は閉塞性睡眠時無呼吸症候群(obstructive sleep apnea syndrome: OSAS)である. OSASは睡眠中に上気道の完全~部分的閉塞をきたし無呼吸と低呼吸を繰り返す.その結果,間歇的低酸素血症,交感神経活動亢進などを認め,全身性炎症や高血圧症,耐糖能障害,動脈硬化の原因となり虚血性心疾患,脳血管障害を引き起こす重要な疾患である.これまで,OSASが時計遺伝子を構成する分子生物学的な概日時計 (circadian clock)に影響を及ぼすことを明らかにしてきた.本年度は概日時計が管理している時計被制御遺伝子(clock-controlled gene: CCG)をモチーフ検索で複数明らかにした. 本年度は臨床疾患との関係で考えた.OSASが気管支喘息に合併すると喘息症状が悪化し,持続気道陽圧(CPAP)療法を行うと喘息症状がよくなる症例の存在が報告されている.今回,調べた遺伝子の中で,遺伝子上流に cis-element として E-box, D-box, RREなどの塩基配列をもつ,ヒト気道平滑筋に関係する遺伝子を複数同定した.これらの遺伝子は末梢時計遺伝子群で構成された概日時計に支配される時計被制御遺伝子と推測される.概日時計と時計被制御遺伝子群を包括したシステムにより,臨床疾患の増悪メカニズムの新しい機序を検討することが可能になるかもしれない.
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