研究課題
特発性間質性肺炎(IIPs: idiopathicinterstitial pneumonias)は早期発見がいまだ困難であり,なおかつ有効な治療の選択肢が限られているために,新たな診断法と治療法の開発は急務である.新規バイオマーカーならびに治療法を開発するために,私たちは外科的肺生検を施行し,IIPsと診断した症例の肺生検組織を用いてマイクロアレイ解析を行った.IIPsの肺組織において発現上昇を認め,なおかつその局在が膜・分泌タンパクをコードすると予想される分子は,血清バイオマーカーのみならず抗体医薬の有用な標的分子とも考えられる.本研究ではマイクロアレイを用いた網羅的発現解析を起点として,バイオインフォマティクスを駆使した探索戦略を確立することにより,健常人の肺組織と比較してIIPs症例の肺組織における発現レベルが発現上昇している膜・分泌タンパクをコードすると予想される分子を多数同定した.現在,これらの新規血清バイオマーカーの候補分子については臨床応用に向けて多数症例における検討を行っているところである.一方で,マイクロアレイ解析により正常肺と比較してIIPsの肺組織における発現レベルの変動している遺伝子群を抽出し,Ingenuity Pathway Analysisを用いた解析を行ったところ,IIPsのマイクロアレイ解析の発現プロフィールは,悪性腫瘍の発現プロフィールと非常に類似していることを見出した.私たちが治療の標的分子として抽出したいくつかの分子は既存の分子標的治療薬により抑制されることが報告されている.悪性腫瘍に対してすでに臨床応用されており,その有用性と安全性が確認されている新規の分子標的治療薬を間質性肺炎に応用することは,新規に薬剤を開発する場合に比較して時間的にも経済的にも有用性が高いものと思われる.現在,ブレオマイシン肺線維症モデルにおいて,分子標的治療薬を投与することにより,病態の進行を抑制しうるかを検討しているところである.
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