研究課題
喫煙は肺癌の最大の原因ではあるが、近年わが国では非喫煙者の非小細胞肺癌が増加の傾向にある。従来、肺癌の原因として喫煙以外に、環境因子、遺伝的素因、ウイルスの関与が示唆されてきたが、最近の世界的疫学研究結果においても、喫煙以外の因子の関わりを強く示している。本研究において、一部の非小細胞肺癌で新規腫瘍ウイルスであるメルケル細胞ポリオーマウイルス(MCPyV)のゲノムが見出されることを報告した。MCPyVは普遍的に存在するウイルスとされ、腫瘍に関係しない場合は野生型ゲノムを有する。しかし皮膚癌の一種であるメルケル細胞癌で見出されるMCPyVは腫瘍特異的ゲノムの変化が起きることが知られている。すなわち、MCPyC LT遺伝子に変異が生じ、ウイルス複製が抑えられること、あるいは腫瘍細胞の染色体にウイルスゲノムが組み込まれることである。本研究では、肺扁平上皮癌と肺腺癌において、これらの腫瘍特異的ゲノム変化が生じている症例を見出した。これは一部の非小細胞肺癌の発症あるいは進展にMCPyVが関与していることを示唆する。アジアから検出されるMCPyV株のDNA配列の情報は少ない。そこで肺癌症例も含めてわが国から検出されたMCPyVのlarge T antigen (LT)とviral protein 1 (VP1) 領域をPCRで増幅し、そのPCR産物をシークエンス解析に供した。これらのデータを基に遺伝子系統解析を行った結果、わが国で蔓延しているMCPyVの遺伝子型は、欧米から検出されるMCPyV株とは異なることが判明した。さらに症例数を増やして解析する必要があると考えられた。
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