研究概要 |
特発性肺線維症は肺の線維化により進行性の呼吸不全をきたす難治性肺疾患である。特発性肺線維症の病態における重要な特徴は、肺病巣局所においてリンパ球増加がみられないことである。近年我々はリンパ球アポトーシス誘導因子であるReceptor-binding cancer antigen expressed on SiSo(RCAS1)が特発性肺線維症の肺病巣部に高発現していることを見いだした。特発性肺線維症の病巣においてリンパ球の過剰なアポトーシスが誘導されており、そのためリンパ球からのinterferon-γ(IFN-γ)産生が低下し、過剰な線維芽細胞の活性化・増殖、コラーゲンの沈着、瘢痕形成を引き起こし、肺線維化を促進するものと考えられている。一方、活性化されたリンパ球にはRCAS1 のreceptor が存在しており、RCAS1がその受容体を介して活性化されたリンパ球のアポトーシスを誘導し、その増殖を抑制することが明らかになっている。本研究の目的は、特発性肺線維症におけるRCAS1 の肺線維化における役割を解明し、最終目標は治療応用へ発展させることである。計画している研究の具体的項目は、①特発性肺線維症の気管支肺胞洗浄液・肺組織中RCAS1, IFN-γ発現の検討、②特発性肺線維症におけるRCAS1産生細胞の同定、③ 特発性肺線維症でのRCAS1特異的なリンパ球アポトーシスの誘導作用とIFN-γ産生の検討、④ ブレオマイシン肺線維症マウスモデルにおけるRCAS1発現亢進・低下による肺線維化の影響の検討、である。
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