研究課題/領域番号 |
23591154
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
高橋 弘毅 札幌医科大学, 医学部, 教授 (60231396)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 急性肺障害 / Toll-like receptor / 肺コレクチン |
研究概要 |
急性肺障害、なかでも抗がん剤等で惹起される薬剤性肺障害は臨床上重要な有害事象である。本研究では急性肺障害の増強因子としてのToll-like receptor(TLRs)の関与を明らかにし、さらにTLRsの制御因子として知られる肺コレクチン投与による障害抑制効果について検討する。 肺コレクチンKOマウスを用いた薬剤性肺障害の作成と肺障害の評価を行った。週齢8週のSP-A(-/-)マウス及び野生種C57BL/6 マウスに薬剤(ブレオマイシン)をマイクロポンプ使用下に皮下へ持続投与し肺障害モデルを作成した。ホルマリン固定肺組織をH-E及び E-V染色にて肺障害の程度を光顕観察した。薬剤投与21日目の肺組織において胸膜直下主体に線維化を認めた。さらに、気管支肺胞洗浄液(BALF)を細胞沈渣と上清に分離し、細胞数および細胞分画、TNF-α、TGF-βを定量した。薬剤投与7日目に好中球数の増加とTNF-αの増加を認め、SP-A(-/-)マウスでは有意に増強していた。薬剤投与14日目にSP-A(-/-)マウス群でTGF-βの増加を認めた。これらの結果はSP-A(-/-)マウスにおいて薬剤投与後早期の炎症が増悪し、さらに引き続き後期の線維化においても肺障害が増強しているものと考えられた。 また、次年度に薬剤性肺障害を誘導した肺コレクチンKOマウスへの肺コレクチン投与実験を行うため、本年度においてはCHO細胞を用いてrecombinant SP-A、recombinant SP-Dを作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度、研究の基盤として最も重要な[肺コレクチンKOマウスを用いた薬剤性肺障害の作成と肺障害の評価]を行うことが出来たことで上記評価とした。薬剤性肺障害のモデルを作成する上で、ブレオマイシン、アミオダロン、ゲフィチニブなどを様々な濃度で経気道投与や皮下投与を行い、条件を設定するのに時間を要したが、最終的にブレオマイシンを用いたモデルで評価することができた。また、コレクチンの中でもSP-A(-/-)マウスで重要な知見を得ることが出来た。なかでも、薬剤投与早期のTNF-α産生増強はTLRの関与を示唆するものとして重要と考えられた。 肺コレクチンKOマウスへの肺コレクチン投与実験も初年度に行う予定であったが、比較的多量の合成蛋白が必要であり、本年度は蛋白作成を行い、更なる解析は次年度に行うこととした。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度に得られた結果を基にして、薬剤刺激に関連したTLRs発現機序の解明を行う。薬剤投与後のSP-A(-/-)マウス、SP-D(-/-)マウス及び野生種C57BL/6 マウスより回収したBALF中の肺胞マクロファージ及びマクロファージ系細胞株U937細胞(JCRB9021)におけるTLR2およびTLR4発現量を薬剤非投与マウスと比較分析する。週齢8週のSP-A(-/-)マウス、SP-D(-/-)マウス及び野生種C57BL/6 マウスにSP-A、SP-Dをネブライザーにより投与し、肺障害の程度を評価する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度の残額が1,028,261円となっているが、コレクチンのマウスへの投与実験が次年度に持ち越されたことと東日本大震災による学会中止や研究材料納入遅れが主要因である。次年度に引き続きマウスを用いた実験を行うことから、実験動物購入とそれに用いる器具を購入する。細胞培養に用いる試薬や培養液を購入する。TLR発現の確認のためにPCR試薬を購入する。また、合成蛋白の生成に必要な試薬を購入する。
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