急性肺障害、なかでも抗がん剤等で惹起される薬剤性肺障害は臨床上重要な有害事象である。本研究では急性肺障害の増強因子としてのToll-like receptor(TLRs)の関与を明らかにし、さらにTLRsの制御因子として知られる肺コレクチン投与による障害抑制効果について検討する。 H23年度に肺コレクチンKOマウスを用いた薬剤性肺障害の作成と肺障害の評価を行い、SP-A(-/-)マウスにおいて薬剤投与後早期の炎症が増悪し、さらに引き続き後期の線維化においても肺障害が増強しているものと考えられた。 H24年度はさらにその機序を解明するために、肺胞マクロファージ細胞と薬剤、肺コレクチンの関係についてin vitroで検討を行った。週齢8週のSDラットの肺胞洗浄液から肺胞マクロファージを分離し、薬剤(ブレオマイシン)で刺激したところ、TNF-α、IL-1βなどの炎症性サイトカインの産生を認めた。ブレオマイシンと共にrecombinant SP-Aを細胞上清に加えたところ、これらの炎症性サイトカイン産生は抑制された。また、Razonableらの報告によるとブレオマイシンによる炎症はTLR2を介するとされるため、HEK293細胞にTLR2を遺伝子導入し、ブレオマイシンで刺激したところ、濃度依存性に炎症性サイトカインの産生を認めた。これらの結果よりブレオマイシンによる炎症性サイトカインはTLR2依存性に肺胞マクロファージから産生され、SP-Aがその制御に関与していることが示唆された。 最終年度に肺コレクチンとブレオマイシンや受容体との結合を検討した。ビアコア法を用いて分子間の結合を検討すると、ブレオマイシンはsTLR2と結合しうることが分かった。またブレオマイシンはSP-Aと強く結合した。ELISA法ではブレオマイシンはsTLR2と結合したが、SP-Aによりその結合は阻害された。
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