研究課題/領域番号 |
23591158
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
木村 弘 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (20195374)
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研究分担者 |
濱田 薫 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (80228535)
吉川 雅則 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (80271203)
山内 基雄 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (30405378)
藤田 幸男 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (60571023)
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キーワード | 低酸素 / 呼吸調節 / 呼吸不全 / 呼吸困難感 / 睡眠時無呼吸症候群 |
研究概要 |
生体における血液ガスの恒常性は、呼吸調節系における2つのフィードバックシステム、つまり高炭酸ガス換気応答(HCVR)と低酸素換気応答(HVR)において調節されている。通常の平地環境下での健常人においては、呼吸調節系は約90%がHCVRにより、約10%がHVRにより制御されている。しかし、HCVRは高炭酸ガス環境下ではその感受性は鈍化しやすい、つまり、順応を起こしやすいため、呼吸器疾患に罹患した病的状況下ではHVRの果たす役割は増加する。つまり、低酸素血症や高炭酸ガス血症の病態下ではHVRの果たす役割は通常以上に大きくなるが、HVRの測定は低酸素負荷を伴うため容易には施行しえない。 本研究では【研究1】として、Dejoursが提唱したwithdrawal test(WT法)を用い、安全性を担保した、HVRの測定・評価の確立を目指した。また、WT法の測定をオンライン解析できるようなシステム構築に取り組んだ。これまでの3年間で、奈良県立医科大学倫理委員会でのWT法の承認を得たうえで、健常者を対象とした測定・評価システムを確立し、さらに、慢性呼吸器疾患患者におけるHVRの経年的変化、HVRと増悪の関連など追跡調査を行っている。さらに、『肥満低換気症候群(OHS)においては、OHSと診断しえない通常の睡眠時無呼吸症候群(SAS)と比較して、代謝量に見合う低酸素化学感受性の亢進を認めないことが病態の本態である』との仮説について検証を行うために、SAS/OHS患者の換気応答とBMI、呼吸機能、PSG、動脈血ガス値などとの関連を分析中である。 【研究2】の動物実験としては、HVRおよびHCVRの加齢変化、経年的変化を検討するために、C57BL/6Jマウスを用い経時的にそれらの変化を測定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
【研究1】については、前年度はWT法を用い、HVRを臨床評価しうる安全な検査法をほぼ確立することができた。本年度では、呼吸不全/準呼吸不全患者および、肥満低換気症候群(OHS)患者に対して、WT法を用いてHVRを評価した。現時点での症例数は、COPD患者16名、睡眠時無呼吸症候群(SAS)10名、肥満的喚起症候群(OHS)1名。CODPの患者背景は、男性 14名、女性 2名、年齢 70.9±10.0歳(平均±標準偏差;以下同様)、BMI 20.1±3.7kg/m2、%FEV163.3±22.8%であった。純酸素で3呼吸させた際の換気量は室内気のそれと比較して7.1±7.2%増加していた。そのなかで換気量が低下したものは3名であった。SAS 10名の患者背景は、男性 6名、女性4名、年齢55.6±13.7、BMI 29.2±4.4 kg/m2、AHI 42.4±14.4であった。同様に純酸素を吸入させた際の換気量は6.3±4.5%増加していた。そのうち換気量が低下したものは1名であった。現時点ではOHS患者は現時点では1例のみであり、さらなるOHS症例の蓄積が待たれる。現時点においては、3呼吸の純酸素吸入時の反応性に個人差が存在することを明らかにすることができた。今後さらに症例を集積し、その個人差と病態的意義について検討する予定である。マウスを用いた【研究2】に関しては、HVRおよびHCVRにおける経年変化の影響を解析する予備実験、およびデータ計測を行った。
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策としては、【研究1】では、呼吸不全・準呼吸不全患者をふくむ、慢性呼吸器疾患患者を対象に、低酸素化学感受性をWT法にて経時的に低酸素化学感受性を追跡するとともに、増悪エピソードの程度・頻度(救急受診、入院等の回数)、呼吸困難感・QOLの評価、動脈血ガス分析値、体重をはじめとする筋蛋白量・脂肪量・骨塩量等の栄養評価、呼吸機能検査、睡眠時呼吸異常の評価、などと低酸素化学感受性との関連について経年的に解析を進める。一方、ヒトにおいては、加齢に伴い睡眠呼吸障害のイベントが増加することが知られていることより、【研究2】では、C57BL/6Jマウスを用いた実験を行う。経時的に、安静時の呼吸不規則性、HVR、HCVRを評価し、加齢に伴う呼吸調節系の変化を検討する。またこれらの変化と睡眠呼吸障害の病態との関連について考察を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
【研究1】における栄養評価のためのELISA試薬・抗体等の購入は、検体を凍結保存後、まとめて行うこととした。そのために購入が平成26年度にずれ込んだ。【研究2】に関しては、実験計画がやや遅れているために実験にまつわる費用が平成26年度にずれ込んだ。 【研究1】においては、栄養評価のための炎症性サイトカイン、各種ホルモン・ペプチド、骨代謝関連の測定のためのELISA試薬・抗体等の購入が必要となる。【研究2】に関しては、HVRおよびHCVRを施行するための、動物購入費用、吸入ガス費用、ボディプレチスモグラフチャンバー管理費用等が必要となる。
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