研究課題/領域番号 |
23591160
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
石井 晴之 杏林大学, 医学部, 講師 (30406970)
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研究分担者 |
中田 光 新潟大学, 医歯学総合病院, 教授 (80207802)
田澤 立之 新潟大学, 医歯学総合病院, 講師 (70301041)
似鳥 俊明 杏林大学, 医学部, 教授 (80137512)
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キーワード | 肺胞蛋白症 / densitometry / 胸部CT |
研究概要 |
本研究の目的は、肺胞蛋白症の高分解能CT所見をdensitometryによる肺野濃度測定で客観的に検討することである。今回、びまん性疾患の中でも肺胞腔内の変化が主体で肺野濃度が比較的均一である肺胞蛋白症を対象に評価した。 平成23年度はdensitometryによる肺野濃度の最適測定条件を検討するため、肺胞蛋白症3例(軽症、中等症、重症)にて検討し以下の結果を明らかにした。東芝メディカルシステムズAquilion 64を用いて管電圧120kvp、管電流(Auto mA制御SD12) 0.5s/rot、スライス厚1mm、再構成間隔0.8mm、再構成関数FC13にて解析画像処理し、画像解析するにはAZE社のvirtual place雷電Plusを応用することが適正であった。この撮影条件にて肺野濃度平均値は重症度に正の相関、肺全体の容積に負の相関を示す傾向をみとめた。 平成24年度は肺胞蛋白症でのdensitometryによる肺野濃度測定値が、肺胞内腔の変化を反映しているかどうかを検証した。細かな気腔が存在する数種類のスポンジを肺モデルのPhantomとして用い、生理食塩液などを流し込み肺野濃度の評価を試みた。しかし肺胞蛋白症症例と同程度の肺野濃度となる肺胞蛋白症モデルを作成することはできなかった。また前年度と同様、症例を集積するため肺胞蛋白症5例と間質性肺炎3例を追加した。前年度にも撮影した肺胞蛋白症2例では、上記の撮影条件で肺野濃度測定値の再現性は確認した。 最終年度は統計解析を行うために症例の追加は必須である。集積した症例で肺野濃度測定値、もしくは測定値の経時的変化に注目し、臨床データ(血清マーカー、肺機能所見など)との相関性を評価しdensitometryによる肺野濃度測定の臨床的意義を明確化していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度は①肺胞蛋白症における肺全体の肺野濃度をdensitometryにて測定する適正基準を決定し、②肺胞蛋白症の重症度(軽症、中等症、重症)に合わせて肺野濃度測定値の正の相関傾向がみられることを明らかにした。平成24年度は症例集積を目的としたため、肺胞蛋白症5例と間質性肺炎3例の画像情報を収集した。これにより平成23年度と平成24年度の画像情報をもつ2症例について③画像データの再現性を確認することができた。また④densitometryにて測定した肺野濃度の統計量は三次元構築した画像所見とも対応している傾向も確認できた。 しかしながら平成24年度には臨床データ(血清マーカーや肺機能検査など)との相関性を評価することが出来なかった。その理由としては、経時的に画像情報を集積できた症例が2例のみであり、かつこれらの症例は肺胞蛋白症の病状が安定しており病勢を評価することが困難であった。次年度は平成24年度に追加した症例も含めて経時的な評価ができる症例が増えたため、臨床データとの相関を評価していく。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度と平成24年度において、肺胞蛋白症6例の画像解析が行えたため次年度には十分な画像情報が加わることができる。本疾患は稀少疾患であるため、経時的なデータを含めて次年度は臨床データとの相関を評価し、臨床的意義を明らかにしたい。 臨床的意義とは、①肺胞蛋白症における病勢および予後関連因子に画像情報が有用かどうか、②他のびまん性肺疾患との鑑別に肺野濃度測定が有用となるかどうか、に焦点を絞って解析していく。本研究での対象症例数は少数だが、予後や臨床データの比較情報としては、Japanese Center of Rare Lung Diseases Consortium(研究代表者:石井、分担研究者:中田、田澤)からの肺胞蛋白症の臨床情報も活用して検討していく事を計画している。最終年度のため研究者間での画像情報と臨床情報との評価項目を年度早期に論議し、解析を進めていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究計画として最も重要なのはdensitometry測定する症例集積とそのデータ解析である。平成23,24年度で症例集積のためにJapanese Center of Rare Lung Diseases Consortiumとの会議を行い、追加症例の集積ができた。これらの症例の継時的データも含めて十分なデータが揃いつつある。東京および新潟で各1回開催するため交通費および会議費として代表者および各研究分担者・協力者に研究費を配分する。またデータ解析のための統計ソフトウェアは症例数の集積ができたため、次年度に購入を計画している。平成23, 24年度の結果をもとに次年度の情報集積により成果を学会発表および論文化へとつなげるため国内外での学術会への参加経費を要する。 ・統計解析ソフトウェア 300,000円 ・会議経費(Japanese Center of Rare Lung Diseases Consortiumとの会議(2回開催)、本研究班での会議(3回開催)を含む)として交通費、会議資料作成費など 500,000円 ・学術会への参加・論文化への経費 500,000円 ・消耗品費 100,000円
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