研究課題
間質性肺炎を発症する遺伝性疾患であるヘルマンスキーパドラック症候群(HPS)のモデルラットでの肺病変および肺サーファクタント(LS)輸送・分泌を解析した。Rab38低分子量Gタンパク質を欠損し眼皮膚型白皮症と出血傾向を有するHPSのモデルラットとしてLong Evans Cinnamon(LEC)ラットを使用した。同ラット肺には間質性肺炎ではなく肺気腫様病変が起きていた。II型上皮細胞は大型化し、胞体内に著明に大型化した層状封入体を含有していた。気管支・肺胞内には、軽度の出血と好中球の増加、脂質の貪食により大型化した胞体を有する肺胞マクロファージがみられた。LS脂質成分のフォスファチジルコリン(PC)は組織および層状封入体分画で著明に増加していたが、肺胞腔内での増加はみられなかった。同様に疎水性LSタンパク質SP-Bも同じ傾向を示した。親水性LSであるSP-AとSP-Dには明らかな変化はみられなかった。単離培養したII型細胞からのPCの分泌活性をみたところ、無刺激状態での分泌は低下していたが、各種アゴニストによる分泌刺激では著明な分泌活性を示した。アデノベクターにRab38-cDNAを組み込み、初代培養II型肺胞上皮細胞およびLECラット肺へ経気道的に肺に感染させた。培養II型上皮細胞からの分泌活性は野生型ラットに近づくように改善された。またin vivoで経気道感染させた肺でのPCやSP-Bの含有量にも野生型へ近づくような改善がみられた。以上よりRab38の欠失によりLSのII型細胞内での輸送・分泌に異常が起き、予想に反し間質性肺炎ではなく肺気腫様病変が引き起こされることが明らかにされた。他文献からの知見と合わせ考察すると、ヒトHPSでの間質性肺炎には1stヒットである遺伝子異常に加え、2ndヒットである呼吸器感染、加齢、粉じん吸入などの要因が関わっていると推測された。
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