研究課題/領域番号 |
23591167
|
研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
田端 千春 兵庫医科大学, 医学部, 准教授 (90432393)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 間質性肺炎 / サイトカイン / 血管新生 / レチノイド / サリドマイド / 酸化ストレス / 中皮腫 / 慢性閉塞性肺疾患 |
研究概要 |
悪性胸膜中皮腫はアスベスト曝露に関連する悪性腫瘍であり今後さらに増加傾向を示すことが予想される。しかしながら治療抵抗性であり予後不良の疾患であるため、早期診断が重要であるが、現在臨床において有効な生物学的胸水マーカーに乏しく、新規生物学的マーカーの開発が急務を要する。メソテリンは中皮腫細胞などの細胞表面に過剰発現する糖蛋白であるがその生物学的機能については十分に解明されていない。悪性胸膜中皮腫において血清メソテリンが有用であることが近年報告されているが、胸水メソテリンの臨床的有用性は十分に確立されていない。今回、胸水中メソテリンをenzyme-linked immunosorbent assay (ELISA)法で測定し検討した。(研究結果)悪性胸膜中皮腫群と非悪性疾患群間の胸水メソテリン値のROC曲線から、感度80.0%, 特異度83.3%で至適cut-off 値を10 nMに定めた(AUC =0.863、95% CI: 0.792-0.935)。はじめに、悪性胸膜中皮腫群(52.3 ± 57.6 nM)は非悪性疾患群(6.4 ± 4.6 nM)および悪性胸水を伴う肺癌患者群(5.7 ± 4.5 nM)と比べて胸水メソテリン値は有意に高値であることを見出した(共に、p<0.001)。次に診断時の胸水メソテリン値がcut-off 値10 nM以上の群・36症例(平均値64.13 nM [interquartile range: 25.90-89.60])とそれ以下の群・9症例(平均値4.76 nM [interquartile range:1.80-7.25])に分けて、生存率についてKaplan-Meier methodで比較検討した。その結果、胸水メソテリン低値群は高値群に比べて、有意に生存率が低下することを示した(log-rank test: p=0.014)。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
難治性肺疾患である悪性胸膜中皮腫の臨床応用可能なバイオマーカーを探索した結果、現在までに胸水マーカーとしてのメソテリン、MMP-3、チオレドキシンの有用性について実証した。
|
今後の研究の推進方策 |
現在までに実証してきた血清・胸水マーカーの有用性をさらに検証し、臨床応用を目指す。(1)間質性肺炎・肺線維症の臨床応用可能な新規治療開発(2)悪性胸膜中皮腫の血清・胸水バイオマーカーの確立(3)慢性閉塞性肺疾患の臨床応用可能な新規治療開発
|
次年度の研究費の使用計画 |
(1)間質性肺炎・肺線維症の臨床応用可能な新規治療開発ーブレオマイシン誘導肺線維症マウスモデルを用いた新規治療薬の開発・ヒト肺線維芽細胞における新規薬剤の増殖・遊走・サイトカイン産生抑制効果の検討(2)悪性胸膜中皮腫の血清・胸水バイオマーカーの確立ー悪性胸膜中皮腫細胞からのサイトカインなどのタンパク産生の検討とその結果に基づく血清・胸水中タンパク質の検出(ELISA法)(3)慢性閉塞性肺疾患の臨床応用可能な新規治療開発ー肺胞上皮細胞を用いたタバコ抽出液による細胞毒性・増殖・アポトーシスの検討とその影響を抑制する新規治療薬の開発上記の実験に必要な機器を取りそろえる。
|