研究課題/領域番号 |
23591169
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研究機関 | 川崎医科大学 |
研究代表者 |
岡 三喜男 川崎医科大学, 医学部, 教授 (40223995)
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キーワード | 肺がん / がん精巣抗原 / がんワクチン / ペプチドワクチン / がん免疫療法 / 制御性T細胞 / 抗体産生 / 予後因子 |
研究概要 |
【背景】我々は、肺腺癌にがん精巣抗原のXAGE-1bが高頻度で発現し、XAGE-1bに対する特異的な免疫応答が高率に誘導されている事を報告してきた。さらに、XAGE-1bにおいてCD4およびCD8T細胞が認識するアミノ酸配列を決定した。今回、XAGE-1b特異抗体価による細胞性免疫の強さと臨床的意義について、肺がん組織における免疫抑制に作用する制御性T細胞の存在と意義について検討した。 【対象と方法】当診療科を受診した肺腺癌 246例と健常人50例を対象とした。血清抗体価はXAGE-1b合成タンパクを用いELISAで測定し、抗原特異的T細胞反応はIFN-γ-ELISA 法で解析した。当院で切除された肺がん組織のT細胞を分離して、FACSで解析した。 【結果】XAGE-1b特異的抗体は肺腺癌33/246例(13.4%)で検出した。血清抗体価別では、強陽性(健常人の10,000倍以上)が7例、中等度陽性(1,000倍以上)20例、弱陽性(1,000倍未満)6例であった。血清抗体価が強陽性群では、高率にXAGE-1b特異的なCD4およびCD8 T細胞が誘導され、細胞傷害活性を有するT細胞が多く含まれていた。また、進行期肺腺癌120例において血清抗体価陽性群は、非陽性群に対し、有意に生存期間の延長を示し(32.3ヵ月 vs. 14.4ヵ月 )、多変量解析の結果、Performance StatusとXAGE-1b抗体価が独立した予後因子であった。肺がん組織4例について、制御性T細胞の活動型を検出した。 【結語】肺腺癌でのXAGE-1b抗体価は、生体内の腫瘍免疫応答を反映し、かつ予後マーカーとして有用である。この結果、XAGE-1bを標的にした肺がんの免疫療法が大いに期待された。また癌免疫療法で障害となる組織中の活動型制御性T細胞の存在を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
【平成24年度の目標、達成度、理由】 (1)世界初のXAGE-1b長鎖合成ペプチドワクチンによる第一相の臨床試験を本格実施する。(この試験はLudwig Cancer Institute, NYによる国際共同試験になる可能性がある) →(理由)オランダのライデン大学で製造中のペプチドワクチンの毒性試験と認可が遅れている。 (2)臨床試験登録患者において、液性および細胞性免疫モニタリングを行い、とくに免疫抑制に働く制御性T細胞の経時的な動向を観察する。 →(理由)患者の末梢血および肺がん組織内での制御性T細胞の解析は完了し、やはり肺がん局所においては免疫反応を抑制する因子が強く働いていることが確認された。
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今後の研究の推進方策 |
(1)世界初のXAGE-1b長鎖合成ペプチドワクチンによる第一相の臨床試験を本格実施する。 (2)現在、進行中の制御性T細胞除去を目的にした抗CCR4抗体医師主導臨床試験の結果をみて、世界初のXAGE-1b長鎖合成ペプチドワクチンとの併用療法を計画している。
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次年度の研究費の使用計画 |
(1)世界初のXAGE-1b長鎖合成ペプチドワクチンによる第一相の臨床試験実施の経費として使う。 (2)現在までに解析した制御性T細胞の結果を国際学会および論文として発表する費用とする。
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