研究課題/領域番号 |
23591174
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研究機関 | 公益財団法人田附興風会 |
研究代表者 |
竹村 昌也 公益財団法人田附興風会, 医学研究所第2研究部, 主任研究員 (30378707)
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研究分担者 |
福井 基成 公益財団法人田附興風会, 医学研究所第12研究部, 部長 (50342697)
弓場 吉哲 公益財団法人田附興風会, 医学研究所第4研究部, 研究主幹 (90465948)
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キーワード | 肺癌 / ペプチドトランスポーター |
研究概要 |
細胞膜上に発現するペプチドトランスポーターPEPTsは生体内のペプチドやペプチド製剤の輸送に関与する蛋白である.その幅広い基質認識性と高い親和性ゆえに薬剤送達の標的分子として注目されている.近年PEPT2が多くの腫瘍細胞株に発現・機能していることが確認されているが,肺癌組織におけるPEPTsの発現・機能について検討した報告はない.本研究では肺癌組織におけるPEPT2の発現・機能について分子生物学的解析を行い臨床データとの相関について検討する.これまで肺癌患者25人(男15名:女10名 68.6歳 腺癌18名 扁平上皮癌7名)より肺癌組織および正常気管支組織を採取した. ①肺癌組織および正常気管支におけるPEPT2の基質である蛍光ペプチドD-Ala-Lys-AMCAを作成し、取り込み実験を行った。基質取り込みの程度を定性的に3段階評価した.腺癌に比べ扁平上皮癌で取り込みが強い傾向(p=0.11)を認めたが有意差はなかった. ②肺癌組織および正常気管支におけるPEPT2の蛍光免疫染色を行った. 癌細胞では癌細胞表面および正常気管支上皮に染色を確認した. ③リアルタイムPCRによる検討では, 腺癌と比べ扁平上皮癌においてPEPT2のmRNAレベルの発現が有意に強いことが確認された(p=0.039). 今後、症例集積を行いながら肺癌組織および正常組織のPEPTsの基質取り込み試験,免疫染色,ウエスタンブロッティングおよび定量PCRを行い組織型や臨床データとの関連を検討する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初PEPT2の基質である蛍光ペプチドD-Ala-Lys-AMCAを作成に時間を要したが,現在実験は順調に進展していると考えられる. 検体の集積は外科手術症例数および内容に規定される. 病理診断が優先されるため, 対象者はある2センチ以上の腫瘍径を有する場合に限られる.
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今後の研究の推進方策 |
肺癌組織において基質取り込み能、免疫染色,リアルタイムPCRによるPEPT2のmRNAの発現確認ができたため今後引き続き症例を集積し,以下の実験を実施していく. ①基質取り込み試験:肺癌組織および非癌組織(切除断端正常気管支)におけるPEPTsの取り込み能を調べるため,PEPTsの基質であるD-Ala-Lys-N-epsilon-7-amino-4-methylcoumarin (D-Ala-L-Lys-AMCA)およびその競合阻害剤であるジペプチドGlycyl-(L)-Glutamine (Gly-Gln)を用いて検討する. ②リアルタイムPCR:引き続き癌組織における非癌組織におけるPEPTsのmRNAの発現を検討する. 癌組織別および 癌組織と非癌組織別にmRNAの発現量の違いを定量的に評価する. ③蛍光免疫染色:癌組織および非癌組織におけるPEPTs蛋白の免疫染色を行う. ④癌組織および非癌組織におけるPEPTs蛋白の発現をウェスタンブロットにて検討する.
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次年度の研究費の使用計画 |
蛍光ペプチド(D-Ala-L-Lys-AMCA)の合成が発注してから完成まで約3-4カ月かかるため,納期が次年度に持ち越しとなる. 次年度も引き続き,蛍光ペプチド作成,免疫染色およびPCR関連試薬,本研究に関連する学会・研究会出席のための参加費や出張費、論文作成に使用予定である.
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