研究課題/領域番号 |
23591175
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
西尾 妙織 北海道大学, 大学病院, 助教 (90463736)
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キーワード | 多発性嚢胞肝 / 多発性嚢胞腎 / Sec63 / pkd1 |
研究概要 |
常染色体優性多発性嚢胞腎(Autosomal Dominant Polycystic Kidney Disease:ADPKD)は遺伝性腎疾患の中で最も頻度が高く、加齢とともに嚢胞が両腎に増加し、進行性に腎機能が低下し、70歳までに約半数が腎不全に陥る疾患である。多発性肝嚢胞はしばしばADPKDの患者にある症状であるが、腎嚢胞を伴わない肝嚢胞のみの病態を常染色体優性多発性肝嚢胞(Autosomal Dominant Polycystic Liver Disease:ADPLD)として区別している。ADPLDの原因遺伝として、PLD1(PRKCSH)、PLD2(Sec63)とが同定されている。これまで嚢胞形成の機序について様々な研究がされているが未だ明らかになっていない。また、ADPKD、ADPLDに対しての根本的な治療はまだなく臨床症状に応じて保存的治療が施されているのが現状である。そこで本研究では、多発性嚢胞腎・多発性肝嚢胞のモデルマウスであるSec63コンディショナルノックアウトマウスの解析を行い嚢胞形成の機序を明らかにし、治療法の解明を目指している。 平成24年度はSec63lox/lox: ksp-creマウスとPkd1lox/loxマウスを交配しSec63lox/loxPkd1lox/lox:ksp-creマウスを作成し、Pkd1、Sec63の濃度の違いによるアポトーシスや増殖の差をTUNEL染色やPCNA染色で定量し、またそれらに関与する経路についてウエスタンブロッティングで解析を行った。ノックアウトマウスではCaspase-3、Caspase9の亢進、Bcl-2、Bcl-XLの低下が認められた。これらの結果からアポトーシスは小胞体ストレスの関与が予測されるため、今後さらに解析を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
多発性嚢胞腎の嚢胞形成の原因としてアポトーシスや細胞増殖は重要であるとされ、これを解明することは、治療法の解明につながる。また、Pkd1コンディショナルノックアウトマウスでは、嚢胞増大とともに腎臓も腫大し続けるが、Sec63コンディショナルノックアウトマウスでは、経過の途中で腎臓は萎縮に転じ、その機序は同じではない。今年度は、これらのマウスをかけ合わせたモデルでPkd1、Sec63の濃度の変化による増殖やアポトーシスの経路について詳細に検討することができた。また肝嚢胞の解析を行うために薬剤誘導型のSec63lox/loxPkd1lox/lox:Mx1-creマウスも作成することができ、Pkd1、Sec63の濃度の変化による肝嚢胞の形成も観察することができた。肝嚢胞に関してもアポトーシスや増殖の解析を現在遂行中である。 また、計画書ではSec63lox/lox:pCX-CreマウスのMEF(mouse embryonic fibroblasts)を作成しているとあるが、Sec63lox/lox:Mx1-CreマウスよりMEFを作成した。Mx1-CreはIFN誘導体のpolyinosinic-polycytidylic acid(以下pI-pC)により活性化することで、Pkd1やSec63をノックアウトすることができる。この細胞を使用して、in VitroにてPCP signaling、Wnt signalingなど多発性嚢胞腎や多発性肝嚢胞に関与するとされる様々なPathwayの解析が行宇予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度はまず、平成24年度までに作成したSec63lox/loxPkd1lox/lox:Mx1-creマウスについて、肝嚢胞の嚢胞形成の原因について更に解析をすすめていく。具体的には、腎嚢胞と同様にアポトーシスや増殖に関する経路の他、Wnt signalaing、MAPK/ERK、JAK-STAT経路などこれまで嚢胞形成に関与すると報告のある経路についても解析を行う。 腎嚢胞に関してはこれまで行った解析をもとに、細胞増殖を抑制する薬物、アポトーシス抑制の薬物などを投与し、治療法の解明を行う予定である予定としている。また、作成したMEFを用いてin vitroの解析も行いWound-Healing Assay(細胞を6cm dishにまき、24時間経過時点でdishの中央をひっかきwounded fieldを作成。その後wounded fieldを埋めるべく分裂する細胞の分裂方向を計測する手法)などPCP pathwayの更なる解析も行う。更にPkd1lox/lox:Mx1-creマウスからもMEFを作成し、同様に解析を行う。また、両MEFの比較をすることで、細胞増殖などについても解析を行う。 また、腎嚢胞、肝嚢胞以外の表現型の解析としては、Sec63lox/lox:GFAP-Creマウスにて小脳失調の表現型を認めている。これまで組織学的に解析を行い、Sec63ノックアウトマウスでは小脳の形成に異常があることを解明している。。小胞体ストレスが小脳失調に関連するという報告もあり、Sec63がどの様に小脳失調に関与するかについての解析を免疫染色やウエスタンブロッティング法を用いて解析を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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