研究課題
常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)は遺伝性腎疾患の中で最も頻度が高く、加齢とともに嚢胞が両腎に増加し、70歳までに約半数が腎不全に陥る疾患である。多発性肝嚢胞はしばしばADPKD患者にある症状であるが、腎嚢胞を伴わない肝嚢胞のみの病態を常染色体優性多発性肝嚢胞(ADPLD)として区別している。これまで嚢胞形成の機序について様々な研究がされているが未だ明らかになっていない。そこで本研究では多発性肝嚢胞のモデルマウスであるSec63コンディショナルノックアウトマウスの解析を行い嚢胞形成の機序を明らかにし、治療法の解明を目指す事を目的に研究を行った。ADPKDのモデルマウスであるPkd1lox/loxマウスとSec63lox/lox:ksp-creマウスを交配させpkd1が嚢胞形成に濃度依存性に関与する事を明らかにした。また、Pkd1欠損モデルでは主に増殖が嚢胞形成に非常に関与していることが知られているが、Sec63欠損モデルでは初期には増殖が有意だが、後期にはアポトーシスが有意になり嚢胞は増殖するが腎臓自体は萎縮することを証明した。アポトーシスの経路としてはBcl-2、Bcl-XLの活性が低下しCasepase9の活性化が認められた。Sec63lox/lox:ksp-creマウスの腎臓においてPlanar cell Polarityの解析を行ったが、嚢胞形成前の尿細管上皮においては明らかな異常を認めなかった。共同研究者との研究にて同じくADPLDの原因遺伝子であるPrkcshコンディショナルノックアウトマウスでプロテアソーム阻害剤が腎嚢胞形成抑制する事を明らかにしており、Sec63コンディショナルノックアウトマウスにても同様の効果が期待される。本研究期間内には薬剤投与実験までは達成できなかったが、今後これまで得られた成果をもとに研究を継続する予定である。
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Journal of the American Society of Nephrology
巻: Epub ページ: Epub
10.1681/ASN.2013060606
Internal Medicine
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