研究課題/領域番号 |
23591178
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
今田 恒夫 山形大学, 医学部, 准教授 (60333952)
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キーワード | microRNA / 腎臓病 |
研究概要 |
現時点までに健常人・腎疾患における尿中microRNA抽出とその発現プロファイルの網羅的解析を行っている。 【背景・目的】様々な疾患の発症進展にmicroRNAが関与するとされ、腎疾患においてもいくつかの腎組織microRNAと腎病変の関連について報告がある。しかし、腎疾患における尿中microRNAの発現内容については、検討が不十分である。本検討では、尿中microRNA発現を網羅的に解析し、 腎関連指標・組織病変との関連を検討した 【方法】当院で腎生検を行った各種腎疾患患者71例と健常者5例について、尿中microRNAを抽出し腎指標・組織病変との関連を検討した。Agilent社マイクロアレイ解析(Rel.16.0)を用いて、1257種類のmicroRNA発現を各疾患別に比較した。同一患者の腎生検組織と尿microRNA発現を比較した。 【結果】尿microRNAは全ての尿検体で検出可能であり、総microRNA量と尿蛋白・糸球体硬化に正相関がみられた。健常者の尿検体で136種類、各腎疾患患者の尿検体で83-137種類のmicroRNAが検出された。尿microRNAの発現量・パターンは腎疾患の種類により大きく異なっていた。腎組織から227種類、尿から83種類のmicroRNAが検出され、両検体で検出された75種類のmicroRNAの発現量は正相関を示した(r=0.61, P <0.001)。 【結論】尿中に数百種類検出されるmicroRNAは、腎組織病変により異なり、腎組織microRNAを反映する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度行ったmicroRNAの網羅的解析により、尿に含まれるmicroRNAのプロファイルが明らかになり、健常・各種腎疾患における尿microRNAの発現比較が可能となった。その結果、各腎疾患において尿microRNAの発現プロファイルが異なること、発現しているmicroRNAと腎組織病変が関連すること、腎組織中microRNAと尿中microRNAの発現プロファイルが相似することが明らかになった。このことは、腎疾患の診断において、尿microRNA解析が今後有用なツールとなることを示唆している。 現在、上記結果について、論文作成中である。
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今後の研究の推進方策 |
①進行性腎障害動物モデルにおける腎病変と組織microRNA、尿microRNAの関連を検証する。 我々がこれまで検討してきた進行性腎障害を呈する5/6腎摘モデル、ストレプトゾシンによる糖尿病性腎症モデルを用い、発症初期・進行期・末期に分け、ヒト腎疾患症例で関連が示唆されたmicroRNA変化を腎組織、尿検体で検証する。さらに、降圧剤や血糖降下剤投与などによる治療群も同時に作成することで、治療の有無がmicroRNA、へ与える影響も評価し、病変進行や治療効果の判定に、これらの指標が有効か検証する。 ②コホート研究で尿microRNAが腎疾患・心血管疾患リスクのバイオマーカーとなるか検証する。 現在、我々は一般住民約1000人(平成16年採取)と腎疾患患者約300人(平成20~21年採取)の尿検体を保存している。これらコホートの予後追跡調査を平成25年度末まで行う。この集団において、尿microRNAが予後指標となるかを明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
①進行性腎障害動物モデルにおける腎病変と組織microRNA、尿microRNAの関連の検証 動物モデルを使用するため、動物飼育費、処置・サンプル採取における消耗品、microRNAの抽出と解析のための消耗品を予算に計上した。 ②コホート研究における尿microRNAと腎疾患・心血管疾患イベントの関連の検証 尿サンプルからのmicroRNA抽出と解析のための消耗品に予算を計上した。 ③研究結果を国際学会・国内学会で発表するための旅費、研究成果を論文化するための費用を計上した。
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