研究概要 |
【目的】様々な腎疾患の発症進展にmicroRNAが関与するとされる。本検討では、腎疾患における尿中microRNA発現について解析した。 【方法】健常人5例と当院で腎生検を行った各種腎疾患71例(微小変化型ネフローゼ症候群5例、IgA腎症46例、半月体形成性腎炎9例、糖尿病性腎症11例) 【microRNA抽出と解析】早朝尿上清1mLから尿中microRNAを抽出し、Agilent社マイクロアレイ解析(Rel.16.0)を用いて1257種類のmicroRNA発現をスクリーニングした。また、同一患者(IgA腎症)の腎生検組織と尿から抽出したmicroRNAの発現プロファイルを比較した。 【結果】健常者の尿検体から155種類、各腎疾患患者の尿検体から93~344種類のmicroRNAが検出された。健常者尿でのみ発現を認めたmicroRNAは63種類で、腎疾患尿でのみ発現が認められたmicroRNAは192種類であった。尿蛋白増加に伴い、尿microRNA濃度も増加傾向を示すが、各microRNAの発現量は腎疾患の種類により大きく異なっていた。同一患者の比較では、腎組織から抽出された247種類のmicroRNA中、尿中には84種類が検出され、両者でともに検出されたmicroRNAの発現量は有意な正相関を示した(r=0.366, P <0.001)。 【結論】尿microRNAは総発現量と尿蛋白が関連し、原疾患により発現パターンが異なっていたことから、尿microRNAは腎組織microRNA発現を反映しており、腎疾患の診断や重症度評価に有用であった。尿中microRNAは腎疾患の新たなバイオマーカーとなる可能性がある。
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