研究課題/領域番号 |
23591179
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
上杉 憲子 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (70279264)
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研究分担者 |
長田 道夫 筑波大学, 医学医療系, 教授 (10192238)
青葉 孝昭 日本歯科大学, 歯学部, 教授 (30028807)
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キーワード | ヒト腎内血管 / 3次元構築 / バーチャルスライド |
研究概要 |
平成24年の研究成果は、腎臓小葉間動脈から糸球体にいたる血管樹の3次元構本研究はヒト腎癌非癌部組織の3㎜四方のパラフィン胞埋検体の200枚の連続切片に、内皮マーカーCD34、平滑筋マーカーSMAによる免疫二重染色とPAS染色を行い、それぞれのデジタル画像をバーチャルスライドに取り込み、TRI-SRF2の画像ソフトを用い3次元構築を行うものである。この手技により腎内小葉間動脈から糸球体にいたる3次元構築が完成した。画像は360度回転ができ、種々の角度からの血管樹の構築(血管の分岐の角度や走行距離、血管の太さ、蛇行の程度)が観察できた。この3次元構築を4症例、慢性腎臓病(Chronic kidney disease CKD)が軽く(stage2)合併症を持たない2症例と顕性タンパク尿はないがより進んだCDK(stage3-4)で高血圧をもつ2例で比較検討を行った。CDK軽症群では、小葉間動脈や細小動脈血管は直行し走行し、壁も平滑であったが、CDKの高い群では動脈が拡張し、壁が不整で、蛇行していた。また当初の思っていたよりはるかに精緻な画像がえられたこともあり学会の発表時も、各国の研究者からの反響は大きかった。 バーチャルスライドを用いた腎臓の3次元構築では、マウスの糸球体の画像が発表されている。しかしヒトで、このように広範囲の腎臓の3次元構築はまだない。本研究のような広い範囲の血管3次元構築は、実験動物で侵襲的に血管内に樹脂を注入し血管を抽出する手技で得られているが、この方法では血管以外の構築は抽出しえない。本研究では、2次元的な画像も観察でき、糸球体や間質の観察が可能で、実際に解析もできた。CDKにおける腎内血管障害が糸球体間質障害に影響を与えるメカニズムの解明に本研究の結果は有用で、有意義である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
24年度の最大の目標とする3次元構築を構築する手技が確立でき、さらに実際に小葉間動脈から糸球体にいたるまえの精巧な3次元構築を完成することができた。手技にはかなりの試行錯誤があり、実際には10例以上おこなったが、解析可能となったのは4症例であった。この4症例では2次元解析(血管内膜/中膜比、硝子化血管率、糸球体硬化率、間質線維率)を画像解析ソフトをもちい行い、2次元の解析の手順と方法について確立できた。解析結果は数値化し、今後の比較検討が可能な状態である。 検体収集も順調に進行している。現在まで症例は約60例(目標80例)収集し、年齢は40-80才と多岐にわたり、半数近くの症例が高血圧、高脂血症などの合併症があった。収集した全例に2次元の病理標本を作製し、解析可能な症例を抽出した。癌の浸潤が組織に影響を与えているものは排除したため、2/3程度となった。24年で検討課題であった電顕的検索は、後述する理由から行っていないが、実験を進めていく上で必要がないと思われる。 以上より研究としては比較的スムーズに進行している。
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今後の研究の推進方策 |
1. 24年度と同様に3次元解析を行う。症例を選択し、加齢、糖尿病や耐糖能、高血圧、高脂血症や肥満などが血管の3次元構築に与える影響、血管の異常が糸球体や間質に与える影響を、2次元画像の解析とともに、解析を行っていきたい。 2. 3次元構築を行った結果、進行したCKDでは糸球体の流入流出血管や糸球体周囲の血管にも異常があることが確認された。異常血管は進行した糖尿病性糸球体硬化症で報告されているが、今回は顕性の糖尿病性糸球体硬化症がないCKDの進んだ症例で観察された。これが、CKDで普遍的におこるものか、糸球体障害に関連しているのかを検討をしていきたい。またその機序を知るために異常血管の起源、糸球体との連続性を、3次元解析を用いて行いたい。 3.24年度の研究では、解析可能な症例の半数以上にPAS染色+マッソントリクローム染色をほどこした連続切片(400-800枚)を作成し、バーチャルスライドを利用したデジタル画像を作成した。この観察により、糸球体尿細管接合部の異常(Atubular glomerulus等)の抽出, 癒着や分節性硬化と尿細管障害、あるいは血管障害の関連の観察が可能であることがわかった。これらの病変の存在意義、発症機序について、3次元構築をもちい検討を進めたい。 4.実験の計画では、電顕の検索をあげたが、ホルマリン固定検体では、解析に足る組織標本を作製できなかった。本研究では電顕検索が必須と思えず、解析からはずすこととした。
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次年度の研究費の使用計画 |
3次元構築は引き続け行う予定であり、抗体や染色液、ガラススライドなどの消耗品が引き続き必要である。論文発表のためにの旅費や論文作成のための必要経費が必要である。 予算に余裕があれば、画像解析ソフトの買い換え(Windows 7に対応していないため)を行いたい。
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