研究課題/領域番号 |
23591179
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
上杉 憲子 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (70279264)
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研究分担者 |
長田 道夫 筑波大学, 医学医療系, 教授 (10192238)
青葉 孝昭 日本歯科大学, 歯学部, 教授 (30028807)
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キーワード | 腎微小循環 / 3次元構築 / ヒト腎がん非癌部 / バーチャルスライド |
研究概要 |
平成25年度は、さらなる症例の収集、手技の充実、新しい方法の導入を試みた。腎癌の手術は部分切除術に移行し、非癌部の採取は年々難しくなってきているが、今年度は約10例ほど収集できた。これまでの研究の結果、血管と糸球体・尿細管の2次元あるいは3次元的な関係は、症例内や症例間でのばらつきが多いこと、手技をさらに向上しないと詳細な検討を行えないこと、それに加え、尿細管と血管異常の関連は当初の方法ではわかりにくいことが判明した。統計解析には、症例内でも多数の糸球体や血管の検討を行う必要があり、また慢性腎臓病と形態変化の関連の検討には、多数の症例が必要であるため、さらに症例内での観察切片を増やし、多数の切片と多数の症例の検討を試みた。実験の手技は検討を重ね、向上した。さらに症例を増やし検討する必要がある。尿細管と血管や糸球体との直接的な関係を知るため、近位尿細管マーカーCD10による免疫染色を加え、血管と糸球体、尿細管の3次元構築を試みた。手技の完成に時間を要したが、典型的な2例で腎内小血管から糸球体、さらに近位尿細管にいたる3次元構築が完成した。それに加え、さらに詳細な糸球体を中心をした3次元構築も完成した。この解析方法で、尿細管障害と糸球体、血管の関係の解明に新しい視点を導入することができたと考える。ただし、新しく始めた方法では、処理工程が多く、標本の過剰染色が多くなり、解析が難しいため、今後方法の検討が必要である。 これまでの研究について、日本腎臓学会、日本病理学会、アメリカ腎臓学会で研究成果を発表し、動脈硬化学会ではシンポジストとして発表を行った。 これまでの結果をまとめ、論文作成に着手し、現在は、英文校正を終わり、投稿を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
論文が、完成する予定であったが、いろいろの意見を各方面よりいただき、それを再検討したこと、そのためさらに検討を行ったことが、その遅れの原因となった。 実験(免疫染色)は、工程が複雑になるにつれ、失敗する確率も高くなったことが、実験の進行を遅らせた原因である。 3次元構築を行うためには、2次元の詳細な解析が必要であるが、この作業が予想以上に時間をとっていることも原因である。
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今後の研究の推進方策 |
全ての解析は終わっていないので、これを行う。また検討の過程で、糸球体には、血流障害によるadaptationと思われる腎内微小血管系、とくに輸出動脈の再構築が起こっていることが予測できた。これが腎硬化とどのようなつながりがあるか、どのような状況でおこってくるか、解析が必要であり、今後の検討課題となった。
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次年度の研究費の使用計画 |
購入を予定していた全自動回転式ミクロトームは、類似した機器が大学内の他の部署にあり、借用が可能であったため、未使用額が生じた。 初期の実験の知見から得られた新しい構想による、糸球体再構築における小血管障害を明らかにするための実験のため、次年度に経費が必要である。また、正常のヒト腎内微小血管の3次元構築の論文を作成しているが、その発表の経費が必要である。 新たに始めた糸球体再構築における小血管障害を明らかにするための実験にかかる費用と3次元構築の論文発表の経費が必要であり、それに使用する予定である。
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