2014年研究の成果:日本病理学会総会、日本腎臓学会総会、アメリカ腎臓学会で研究成果を報告、日本臨床分子形態学学会のワ-クショップで、まとめの内容を報告した。論文は、現在reviseを投稿中である。 【全体の研究成果の具体的内容】ヒト腎癌非癌部のパラフィン連続切片に多重免疫染色を施した組織をバーチヤルスライドにとりこみ、その画像から太い小葉間動脈から輸入動脈-糸球体-輸出動脈にいたる3次元構築を試み、その構築に成功した。この画像とともに二次元画像を用い、初期の慢性腎臓病例の微小循環系の画像解析を行い、動脈-動脈、動脈-糸球体の関係を直接的に観察し、形態的な関連を検討した。その結果、初期の慢性腎臓病から輸入動脈の蛇行がみられたが、蛇行輸入動脈が支配する糸球体には明らかな形態変化はなかった。2次元解析では、蛇行輸入動脈は軽度の硝子化がある程度だったが、その中枢側の小葉間動脈は、内膜肥厚や中膜萎縮など中程度以上の動脈硬化病変がみられた。腎生検ではかなりの傷害であるとされる動脈病変でもその支配する糸球体にはそれほど障害がないことが確認された。 【意義や重要性】我々が構築した3次元画像は、360度の回転が可能で、一方向からだけでは確定できない血管の蛇行や壁の不整の確認が可能となり、その解析の結果上記の結果を得た。この知見は、大型の血管の動脈硬化が必ずしも糸球体硬化と相関しないことの直接的証明となった。ある程度の輸入動脈の蛇行は、むしろ糸球体保護に働いていることが示唆された。この知見は、糸球体障害に至らない血管障害を鑑別する上で有用で、腎硬化の進展を形態学的に解明する上で重要である。”新型バーチヤルスライドを用いた腎血管構築の再現”と”慢性腎臓病の進展”を結びつけることができ、研究の目的は達したと考える。今後は多数例の解析にて知見を一般化する予定である。
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