研究課題/領域番号 |
23591181
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
前嶋 明人 群馬大学, 医学部, 講師 (70431707)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 腎幹細胞 / 尿細管再生 / 血管内皮細胞 / 加齢 |
研究概要 |
本研究では腎再生医療の確立を目標として、我々が以前に同定した腎幹細胞の増殖・分化における血管内皮の役割を検討している。組織幹細胞の数は加齢とともに変化することから、腎幹細胞数と加齢の関連について検討した。様々な週齢(7週、7ヶ月、12ヶ月)のラットに対して、浸透圧ポンプを用いてBrdUを1週間ラベルし、その後2週間の観察期間をおいて腎臓を摘出。ホルマリン固定した後、パラフィン切片を作成しBrdU染色を行った。この方法により理論上、活発に増殖する細胞は観察期間に分裂を繰り返し、取り込まれたBrdUは希釈され検出不能となる。つまり、分裂の遅いSlow-cyclingな腎幹細胞は、BrdU陽性細胞として同定される。その結果、加齢に伴い腎幹細胞数は減少することが明らかになった。組織幹細胞の増殖・分化は、その周囲の環境(Niche)により制御されるため、腎幹細胞の増殖・分化もその周囲の間質、特に毛細血管網により規定されている可能性が高い。そこで様々な週齢のラット腎間質毛細血管網の面積を免疫染色により比較したところ、加齢に伴い毛細血管網が減少することが判明した。次に腎幹細胞の増殖・分化に対する血管内皮細胞の影響を調べた。上記BrdUラベリング法でラット腎幹細胞をBrdU標識し、尿細管を分離。分離した尿細管を3次元ゲル内でヒト臍帯静脈由来血管内皮細胞(HUVEC)と共培養し、BrdU陽性腎幹細胞数を比較すると、HUVECとの共培養により腎幹細胞数の有意な増加を確認した。以上のことから、腎幹細胞の増殖・分化に血管内皮細胞が深く関与している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画で行う予定の各種実験は既に習得した技術であり、実施する上で特に支障は来さなかった。予想された結果と異なる結果が得られても、その知見をもとに適宜仮説を修正することにより、当初の目的に向かって順調に研究計画を実施できている。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画に従って、次年度は我々が開発した「尿細管再生のIn vitroモデル」を応用して、腎幹細胞活性化因子のスクリーニングを行う。その結果、活性化因子の候補となる蛋白が同定できたら、腎障害におけるその蛋白の産生量や局在変化および役割(特に腎機能改善効果の有無)についてIn vivoの検証を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
最近我々が開発した尿細管再生のIn vitroモデルを利用して、3次元尿細管構造を効率よく誘導する因子やその情報伝達経路を明らかにする。具体的には、ヒト培養近位尿細管細胞を基底膜構成成分であるマトリゲル(IV型コラーゲン、laminin)とI型コラーゲンを混合したもので3次元培養し、In vivoに類似した環境を作る。ここに様々な既知の腎再生因子を添加し、尿細管構造の有無を調べた結果、HGF刺激により極性を持ったMicrovilliを有する尿細管様管腔構造が誘導されることを確認している。これをHUVECと共培養し、血管内皮由来因子の管腔形成能に対する影響を調べる。既知の血管内皮由来因子(VEGF、PDGF、bFGFなど)の作用を検討し、さらに未知の腎再生因子を探索するため、Superarrayを用いて血管内皮細胞が発現・産生している因子をスクリーニングする。うまくハイブリダイズしない場合は、PCR arrayあるいはProteinarrayを代用して検討を進める。候補因子が絞り込めたら、中和抗体の作用だけでなくsiRNAにより発現を減弱させた場合の効果も検証する。続いて、上記実験により新たに見出された腎幹細胞の活性化候補因子が、様々な腎疾患に対してどのような役割を果たすのかを検証する。具体的には、虚血・再灌流障害急性腎不全モデル、5/6腎摘慢性腎不全モデル、一側尿管結紮腎線維化モデルなどを作成し、尿細管再生あるいは腎間質線維化の過程でその活性化因子の発現量、発現部位の変化を調べる。各疾患モデルを作成した後、経時的に腎臓を摘出し、免疫組織染色、In Situ Hybridizationにより組織学的評価を行う。最終的にはリコンビナント蛋白を作成し、腎障害モデルに対する腎機能改善効果の有無を評価する。
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