研究課題/領域番号 |
23591181
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
前嶋 明人 群馬大学, 医学部, 講師 (70431707)
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キーワード | 腎幹細胞 / 尿細管再生 / 血管内皮細胞 |
研究概要 |
本研究では腎再生医療の確立を目標として、我々が以前に同定した腎幹細胞の増殖・分化における血管内皮の役割を検討している。最近我々が開発した尿細管再生のIn vitroモデルを利用して、3次元尿細管構造を効率よく誘導する因子やその情報伝達経路を明らかにするため、本年度は以下の検討を行った。 ヒト培養近位尿細管細胞を基底膜構成成分であるマトリゲル(IV型コラーゲン、laminin)とI型コラーゲンを混合したもので3次元培養し、In vivoに類似した環境を作成した。ここに様々な既知の腎再生因子を添加し、尿細管構造の有無を調べた結果、HGF刺激により管腔構造が誘導されることが判明した。電子顕微鏡レベルでも極性を持ったMicrovilliを有する尿細管様管腔構造であることが確認できた。これを臍帯静脈由来血管内皮細胞(HUVEC)と共培養し、血管内皮由来因子の管腔形成能に対する影響を調べた結果、共培養により管腔形成が有意に促進されることが判明した。既知の血管内皮由来因子(VEGF、PDGF、bFGFなど)の添加では、その作用は再現できなかったことから未知の管腔形成促進因子の関与が疑われた。血管内皮細胞のと共培養の際に、尿細管細胞でどのようなシグナルが活性化しているかを調べるため、Proteinarrayを用いて解析した。その結果、HGF受容体以外に複数のレセプターチロシンキナーゼ型受容体のリン酸化が確認された。このことは新規の尿細管管腔形成促進システムの存在を示唆していると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画で行う予定の各種実験は既に習得した技術であり、実施する上で特に支障は来さなかった。予想された結果と異なる結果が得られても、その知見をもとに適宜仮説を修正することにより、当初の目的に向かって順調に研究計画を実施できている。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画に従って、次年度は我々が開発した「尿細管再生のIn vitroモデル」を用いて同定された腎幹細胞活性化因子の腎障害における役割を明らかにする。その蛋白の産生量や局在変化および役割(特に腎機能改善効果の有無)についてIn vivoの検証を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は最近我々が開発した尿細管再生のIn vitroモデルを利用して、3次元尿細管構造を効率よく誘導する因子やその情報伝達経路を明らかにした。次年度は、上記実験により新たに見出された腎幹細胞の活性化候補因子が、様々な腎疾患に対してどのような役割を果たすのかを検証する。具体的には、虚血・再灌流障害急性腎不全モデル、5/6腎摘慢性腎不全モデル、一側尿管結紮腎線維化モデルなどを作成し、尿細管再生あるいは腎間質線維化の過程でその活性化因子の発現量、発現部位の変化を調べる。各疾患モデルを作成した後、経時的に腎臓を摘出し、免疫組織染色、In Situ Hybridizationにより組織学的評価を行う。最終的にはリコンビナント蛋白を作成し、腎障害モデルに対する腎機能改善効果の有無を評価する。
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