老化における18型コラーゲン/エンドスタチンの役割および18型コラーゲン/エンドスタチンの腎臓病の発症・進展における役割を分子生物学的に明らかにするため、慢性腎障害モデルであり老化の関与が強く疑われる糖尿病性腎症モデルを18型コラーゲン欠損マウス(KO)に誘導した。 野生型C57BL/6Jマウス (WT) 及びKO(16週齢、雄性)にストレプトゾトシン (STZ) 100 mg/kg/回を3回、腹腔内へ隔日投与した。実験群は、STZを投与したWT (+)・KO (+)および溶媒であるクエン酸緩衝液のみを投与したWT (-)・KO (-)の4群とした。STZ投与15週後にマウスを屠殺し、血液、尿、腎組織を採取した。 WT (+) 及びKO (+) の腎組織を比較したところ、KO (+) において糸球体肥大及び尿細管障害が有意に強く見られ、それに伴って尿中アルブミン排泄量が増加しており、糖尿病性腎症の増悪が認められた。一方、血糖および血圧値は、WT (+) とKO (+) の間に差が見られなかった。 KO (+) において糸球体内毛細血管や傍尿細管毛細血管 (PTC)密度の増大を顕著に認めた。KO(+)の循環血中には血管内皮前駆細胞も増加していた。一方、血管新生促進因子 Vascular endothelial growth factor-A (VEGF-A) や抑制因子 Thrombospondin-1 (TSP-1) のmRNA発現量には有意差を認めなかった。これらの結果より、KO (+)において見られた血管新生の亢進には、血管新生抑制因子エンドスタチンの欠損が関与していることが示唆された。 以上の結果より、マウス糖尿病性腎症の進展において18型コラーゲン/エンドスタチンは血管新生の抑制により、腎保護効果を有する可能性が示唆された。
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